冨山和彦「会社は頭から腐る」ダイヤモンド社

公開日: : 書評(書籍)

この人の容姿がいまいち好きになれない。しかし、この本を強く勧める人がいて、読んでみることにした。結果、かなりおもしろかった。しかし、この人に好感を持てないのはなぜだろう
経営者に能力がない。人間はインセンティブによって動く。学歴が良いことや高齢であることは経営の能力に関係がないばかりか悪影響すらある。これらを実体験を通じて説明している。非常に分かりやすく、説得力ある文章

p3.実際、経営者からはこんな声が頻繁に聞かれました。自分がいなくなると、会社が困る。お客様との関係が切れてしまう。こうなったのは、環境のせいだ、銀行のせいだ、政府のせいだ…。それが真実だとは、とても思えませんでした。産業再生機構に話が持ち込まれてくるということは、会社としては、極めて厳しい状況にあることを意味しています。ところが、経営者は今のポジションにいたいという。経営に問題があったにもかかわらず、です
p4.最大の問題は、この体制による繁栄が30年あまり続いたことにより、経営人材の選抜・育成の仕組みが、予定調和型に陥ってしまったことにあります。環境の変化に関係なく、カイシャ幕藩体制のあるべき姿に合わせて、誰もが行動してしまったのです。旧来のシステムの中からお行儀のよい優等生が選別され、その後、優等生リーダーたちは旧来のシステムとその中で形成された既得権構造を否定できない
p5.ほとんどの人間は土壇場では、各人自身の動機づけの構造と性格に正直にしか行動できない
p13.1人のよきサラリーマン、よき父親、よき夫としては、むしろ真っ当な動機であり、それは当たり前のものとして存在するのだ。今直面している仕事の方向と、個人的なインセンティブの方向が根本的に違えば、よほど「強い」人間でなければ仕事に身が入るはずがない。出向者だけでない。同様にプロパー社員、派遣社員、契約社員には、それぞれのインセンティブがあり、それらは時として相互に矛盾しぶつかり合う
p17.管理部門のスタッフを一定以上増やしても調整業務が増えるばかりで、本質的な業務能力は高まらず、むしろ全体では減少を始める。だからスタッフ部門の「忙しくて手が足りない」「忙しいからちゃんとした分析や計画書を出せない」という話はだいたい、話半分に聞いておいて大丈夫である。そのような状況下ではスタッフ部門の人員、とりわけ管理職やそれに準ずる中高年オジサンの頭数は思い切って減らしたほうが業務遂行能力も意思決定のスピードと的確性も向上する。スタッフ部門のパラドックスはインテリが多い組織ほどその深刻さを増す。その極致が政府の官僚機構である。大雑把にいうと、この手の中高年インテリスタッフ比率の高い組織では、上のほうからスタッフを半分くらいに減らしてもほとんど障害は起きない。以前、ミスミの創業者である田口弘社長(当時)から、「人が足りないという部門からはむしろ人を取り上げたほうが本質的な効率改善が進むものだ」といわれて「うーむ」と頭を抱えたことがある。田口さんはこのようなパラドックスを見抜いていたのであろう
p26.インセンティブとは、働く上で何を大切に思うのか、人それぞれの動機づけされる要因である。ある人は、短期的なおカネに最も反応するかもしれない。逆にある人は、長期の安定的な雇用かもしれない。出世することに多大なインセンティブを感じる人もいる。家族だという人もいるし、有名企業に所属し、社名を聞かれたときに堂々と答えられることだという人もいる。長年にわたる職場の仲間や先輩・後輩との人間関係を何より大事にしたい人も多い。今の仕事を明日もやれることに喜びを感じる人もいるし、私のように同じ仕事を繰り返すと飽きてしまう人もいる。このインセンティブは、人によって違う。また、同じ人でも人生のステージによって変わっていくものである。ここには、能力の優劣はまったく関係がない
p30.なすべきことは、結局、構成員各自のインセンティブ構造と性格を理解し、相互の個性をうまく噛み合わせ、そこに的確な役割と動機づけを与え、かつそのことを丁寧に根気よくコミュニケーションすることである。それを各階層で持続的、双方向的に、そして環境変化に対応しながら柔軟にやり続けることである。ある意味、当たり前だが、こうやって手間のかかる経営努力を骨惜しみせずにやること以外、私には解が見つからない
p40.事業の基本的な経済構造は、実はあまり変わることがない。それこそ、決定的な技術革新やイノベーションが起こらない限り、事業特性は変わらない。そして、実際にはそんな大イノベーションは、歴史的に見て、20年や30年に1回あるかないかである。たとえば、小売店の場合、新しい店舗を作るのに膨大なおカネがかかるため、出店するかしないかが、大きな戦略となる。ところがいったん出店すると、小売業としてコントロールできる付加価値が、売上高の十数%にまで縮小してしまう。こうなると小売業にとっていちばん重要な戦略的な局面は、出店・退店である。もちろん、どういう業態をつくるかも大切だが、それは出店するさらに前の議論である
p44.いかに考え抜いてつくり上げても不確定性をぬぐえない戦略に対し、経営として何をすべきだろうか。それは、フィードバックである。たえず修正していくプロセスが重視されるのだ。P(プラン=計画)→D(ドゥ=実行)→C(チェック=検証)→A(アクション=修正)というマネジメント・プロセスにおいて、戦略がないと、仮説なき戦いになってしまう
p45.戦略の位置づけとして、実践経営上は、仮説にすぎないということをよくわきまえて戦略を構築すべきである。そして、実践の中でずれていくことも当たり前のこととして、たえずフィードバックしながら修正を繰り返していくものである
p47.太平洋戦争時のアメリカ軍は見事にPDCAが回る組織だったので、強かった。このPDCAを回す力こそ、組織能力である。他方、日本海軍は大和や武蔵といった巨艦の建造にその後も邁進した。真珠湾攻撃の立案者で名参謀と謳われた源田実氏が後に語ったところによると、「そんな大方向転換をすると長年苦労してきた水兵たちに対して情において忍びない」という力が大きく働いていたそうである。戦略を策定した後に、経営上本当にやるべきことは、戦略を、PDCAを回す道具として、冷静かつ合理的に利用していくことである
p49.トヨタの強さは、生産、販売、物流などそれぞれの機能で、日々PDCAを徹底的に回しているころにある。「なぜを5回問う」「カイゼン」に代表されるトヨタ語は、まさにPDCAを回すための努力の賜物である。つまりトップから現場の最先端に至るまでPDCAが強力に回っているのだ。しかもそれが、組織のクセとして根づいているところに、真の強さがある
p50.このPDCAを回すというのは一見簡単に見えるかもしれないが、人間の本性と違うものを要求されているのだ。基本的に人間は弱いもので、見たい現実しか見たくない生き物なのである。そういう人間が集まってやっている以上は、むしろPDCAは回りにくくなるのが当たり前である。自分が一生懸命精魂込めて考えた戦略や計画がうまくいっているかなど、冷徹に見るのは、とても辛い作業である。うまく進んでいればいいが、そうでないとまた頭痛の種である。できれば目を背けたくなる。しかも何となくうまくいっていないのではないかと思うと、余計に目をそらしたくなる
p72ムラ社会でまず嫌われるのは、調和を乱す人間、俗にいう「場の空気を読めない人」である。みんな同じ暗黙の契約を持ち、優等生であろうとしているときに、この会社はおかしい、外を向こう、会社を変えよう、などとは絶対にいえないのだ。そうすると、調整能力の高い、うまくまとめられる、理路整然ときれいな作文を書けるといった、”いい子ちゃん”が出世していく。役員になる人の圧倒的多数は、こうした人たちになる。同じような顔ぶれで、小さな世界で、小さな戦いを経てきた人材たち。そんな人たちが経営を担うようになってしまう
p78.意外とホワイトカラーの管理職は徹底的なリストラには遭わないのだ。世代が近く本人や家族のことをよく知っている相手に対して冷徹になれないのが人情。並の経営者は「情に棹させば流される」。厳しい経営局面になると、多くの場合、まず減らされるのは、現場の人である。あるいは先にも触れたように、新卒採用が止められる
p111.創業以来の「祖業」、しかもカネボウをかつて売り上げ日本一に押し上げた繊維事業を切れるのか。超一流の「紡績会社」にめでたく就職、同じ釜の飯を食ってライバルの東レや帝人と戦ってきた先輩や仲間で構成された役員会。役員の少なくとも半数は、その繊維事業担当である。自分を引き上げてくれたOBたちの目もある。その中で役員会の一員として、繊維事業の撤退、ライバル会社への売却を発議し、かつ多数をとれるか。そして決議した後も、ペンタックスの騒動でもわかるように、茨の道である。まさにムラ社会の情理と市場経済の合理との葛藤から、ムラびとたちは、問題の先送りを繰り返し、最後には粉飾決算という隠蔽工作まで行ってしまった。結果的にはとんでもない話だが、インセンティブの奴隷という人間性の本質からすれば、ある意味、自然な展開である。誰も残り少ないサラリーマン人生、大量の返り血を浴びるようなことはしたくない。引退した後も、昔の仲間と気持ちよく酒が飲みたい
p133.たとえば、営業組織を変えるとする。しかし、組織を変えた直後は、絶対に売上げは落ちる。それには2つ理由がある。ひとつは新組織に不慣れでうまくワークしないから。そしてもうひとつは、従来の慣れ親しんだやり方に戻してほしいという思いや意識(あるいは無意識)から生まれるサボタージュである。こうした人間的背景をわからずに、組織改革そのものを「事業が悪化しているから間違っている」と引っ込めさせると元も子もなくなってしまう
p176.東大法学部に入った私は、学生時代、まさにその頂点ともいえる場にいたわけだが、だからこそあえて問いたいのは、東大の入学試験や公務員試験といったリーダーの選抜方法は、リーダーの資質と何か関係があるのか、という至極シンプルなことである。実は学歴秩序を決める入学試験には、試験でよい点を取る、重要なポイントがある。自分の頭で考えないことなのだ
p181.東証一部上場企業における、過去3期の平均増収率上位、下位企業をプロットし、東大出身比率と会社の経済成長収益率を相関させてみる。すると、実は東大出が役員に増えると、会社の成長率はむしろ衰えているように見える。収益性も決して高くはない
p198.マネジメントエリートになる人間は、30歳で一度、全員、キャリアをリセットさせてはどうだろうか。全員、一度クビにしてしまう。役所も銀行も商社もメーカーも30歳でクビである。少なくともマネジメントを目指す人間は、自ら辞めるくらいでもいい。もちろん、会社に戻れる保証もない
p200.学歴エリートたち、しかも男性の高学歴年配者だけが、1%の中でリーダーになったり、経営者になったりしていることに実証的な合理性があるのか。これも少し前に取ったデータだが、東証一部上場企業における、役員の平均年齢と成長性、収益率の相関関係をサンプルデータで見ると、40歳を超えるとほとんど会社のパフォーマンスと役員の平均年齢は関係がないのだ。年齢を経たから立派な役員になれるという、単純な世界ではないことは、データからもわかる

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  • 名前:Max 年齢:人生の2合目くらい 誕生日:夏の暑い日 一言:他言無用ということでお願いします
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