リチャード・カッツ「外資ファンドのように日本の株主も声を出せ(世界の視点)」週刊東洋経済2007.8.11-18
昔読んだ本に、日本の近代産業勃興期の電力会社や鉄道会社の買収などを扱ったものがあった。そういうことは今を生きる日本人にとっては、普通に義務教育を受けている限りでは明確に理解されない
・”モノ言う株主”の中で外国人投資家が目立っていることから、経営者は外国人投資家を”略奪者”とか、日本的な経営手法を崩そうとしていると攻撃している。しかし、現在の企業経営が日本文化の伝統に基づくというのは神話である。たとえば1930年代の日本における配当性向は70%と高かったが、60年代後半には40%にまで低下している。35年には取締役のうち社内から登用された取締役の比率はわずか35%であった。それが51年には90%にまで上昇している。安定株主が株式の過半数を保有するようになったのは、50年代から60年代初めのことである
・海外の”モノ言う株主”は企業の長期的な価値と従業員を犠牲にして短期的な利益を求めていると非難される。スティール・パートナーズ・オブ・ジャパン(SPJ)の例を考えてみよう。東京高裁はSPJのブルドックソースの買収防衛策の差し止めを求めた仮処分申請を”濫用的買収者”として退けた。しかし、SPJはすでに数年にわたって同社の株式を保有している。高裁は03年にSPJが失敗したユシロ化学工業の買い付けの例を引き合いに抱いているが、SPJは同社の株式を保有し続けており、同社の増益や株価上昇で利益を得ている。アメリカでの企業買収でも”アセット・ストリッパー”のような行動はとっていない。03年に米スティール・パートナーズがユナイテッド・インダストリアル・コーポレーション(UIC)を買収したとき、ファンドの責任者ウォーレン・リヒテンシュタイン氏はUICの会長に就任。買収後3年でUICの雇用者は増加し、80%の増収と120%の増益を実現し、『フォーブス』誌はUICをアメリカの中小企業ベスト200社の一つに挙げた
・成長を遂げ、利益を生み出すのは企業以外の何物でもない。企業は正当な競争の下で最善を尽くすことが期待されている。それは、日本企業がアメリカ企業のようになることを意味するわけではない。日本企業が、昔のような企業に戻ることを意味しているのである
20071027064000
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