ひろゆき「2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?」扶桑社新書
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最終更新日:2011/11/06
書評(書籍)
”梅田望夫「ウェブ進化論」ちくま新書”を読んだら、こっちも読んでおいたほうがいい、とどこかに書いてあった。確かにこっちも読んでおいた方がいいと思った。
こちらのほうがリアリティがあるし、泥臭い経験があるという点で読んでいて手応えがある。最近では、”遠藤秀紀「人体失敗の進化史」光文社新書”の次に好奇心をくすぐられた本だった
著者も養老孟司を引き合いに出しながら混ぜっ返しているように、確かに彼の口述筆記だというにおいがプンプンしている。しかし、その辺は割り切ってサクサクと読み進めていく本だ
内容は全般的に好感を持つ。最後の小飼弾氏との対談も良かった。正直、人を外見で判断するほうなので、両氏とか冨山和彦とかはあまり好ましく感じない。しかし、それぞれに良いことを言っていることは理解している
これだけの内容が新書という手軽な形となっており、800円程度で買えるというのは極めて幸福なことだ。買って読まない理由がない
p12.国家権力が潰そうと思えば、そんなものでも潰せてしまうかもしれません。東京地検特捜部が僕を逮捕することも、鈴木宗男さんや堀江貴文さんの逮捕劇を見ていればわかるように、明確な理由がなくても逮捕することができるはずです。では、なぜ東京地検特捜部は僕を逮捕しないのでしょうか?それは、僕や2ちゃんねるが、まだまだコントロールできる存在だから逮捕していないだけだと考えています。今現在、警察から「犯罪事件が起きていて情報が必要です。犯人が2ちゃんねるに残したアクセスログを提出してください」と言われれば、僕がアクセスログを提出して、犯罪者が捕まります。仮に僕が逮捕されてしまい、2ちゃんねるが閉鎖されてしまったとしましょう。しかし、2ちゃんねるのような場所の需要は必ずあるので、違う形で新たな2ちゃんねるが作られてしまいます。しかも、その形を変えた2ちゃんねるアメリカ人が作ってしまうと、本当に日本の法律が適用できない場所になってしまう。つまりは、日本人にとって犯罪予告し放題の掲示板の完成です
p28.「Don’t be evil」と謳うグーグルは、いつか「evil」になることに気づいていて、標語で自分に対するエクスキューズや、言い訳を行っているのかもしれない
p37.優秀な企画力と営業力のほかに、グーグルがすごいと感じるものにサーバーのメンテナンスがあります。サーバー、つまりパソコンというのは1年に1回ぐらい壊れるものなので、10万台のサーバーを導入していると年間で10万回、1日あたり約274台が壊れます。サーバーが壊れる箇所というのは、バードディスクが多いと思うのですが、その壊れる頻度は、とあるレポートによると未知数です。一昔前は、使用した期間や温度によって壊れるとも言われていましたが、実はまったく関係がないということが発表されました
p38.『ウェブ進化論』の梅田さんに対して、カリスマプログラマーである小飼弾さんが、ブログ上で、「それで、梅田さんは、『はてな』でどんなコードを書いたの?」という反論をしていました。僕もそれだと思うのです。技術者でない人間が技術を評価するというのは、医者ではない人間が下した「この医者の技術はすごい」という評価があまり納得できないのに似ています。医者同士で、その技術について語り合ったら、いったいどうなの?ということと同じです
p54.携帯電話よりも、Jリーグやキティちゃんのほうが、まだ投資に値するのではないでしょうか。100年後に携帯電話とキティちゃん、どちらが残っている可能性が高いかを考えると、それはキティちゃんだと思うのです
p74.多くのユーザーがYouTubeを知ったきっかけというのは、著作権違反の動画を観ることができるからでしょう。そんな著作権違反の動画を、私たちの売り物ですと言い張り、それがいまだに通っているところが、無茶苦茶だけれども、すごいと思えるところでもあります。その無茶苦茶な言い張りが、最終的にブランディングへと繋がったのです
p75.YouTubeにしても、そもそも違法な動画をユーザー同士でやり取りしているだけでは、何の利益にもならないうえに費用がかさみ困るだけなので、「提携したらテレビ番組の視聴率も増えて得するかもしれませんよ」とテレビ局に持ちかけたのではないでしょうか? そして、テレビ局は「損するよりは、メリットがあるかもしれないほうに賭けてみよう」ということになったのだと思います。この考え方は、アップルの『iTunes』に似たモデルです。iTunesが発表される前には、前出のナップスターというソフトが出回り、『ウィニー』のように莫大な量の違法なMP3が公開されているのが当たり前でした。そこで、著作権保有側が約1万人のユーザーを訴えたのですが、訴訟をするだけでは儲かりもしないどころか、膨大な費用がかかってしまいました。僕の見立てでは、そんなときアップルが「ウチが1曲100円で代行して売りますが?」と言ったのではないでしょうか。そして、著作権保有者側は、ほとんど儲からないかもしれないが、多少の利益になるだけマシと、参入した。これが、日本のテレビ局であれば、話は違っていたと思います。豊富な資金力を背景に日本のテレビ局は、どんなにお金がかかろうとも違法なものを取り下げさせてしまっていたでしょうから
p86.セカンドライフと似たビジネスモデルは、3Dではないですが、15年前から存在しています。今でも続いている『ハビタット』というものです。ハビタットは、ニフティがまだ富士通の持ち物で『FMタウンズ』ができた頃に始まったサービス。アバターの着せ替えができ、ハビタット内の通貨でアイテムを買うなどいろいろ遊ぶことができます。セカンドライフでRMT(リアルマネートレード)ができることを除けば、画面が奇麗になっただけでまったく同じなのです。ハビタットが15年前からあることを考えれば、富士通のほうがよっぽどすごいはず。しかし、世間の人がハビタットを知らないのか、この事実にはあまり触れられません
p94.古いバージョンのソフトを使い、何かトラブルがあれば、それはシステム管理者の責任です。システム管理者は責任を問われないために、トラブル発生の可能性が少ない新しいバージョンを買う。危機管理の一環として、とりあえず新しいバージョンを入れることになると思うのです。本当に優秀な管理者であれば、古いバージョンのままでもまったく問題にせず、たまにトラブルが起こったとしても、頑張って何とか対処をするでしょう。しかし、サラリーマンである普通の管理者は、面倒臭いので頑張って対処することは、ほとんどありません。新しいソフトが出れば買っておけばいい、ということになる。そこで、周りの企業がビスタに変更すれば、OSの変更ということになるのです
p100.今現在、多くの方が耳にしているインターネットの進化というものは、普及し始めた95年、96年当時と比べてみて何が違うのでしょうか? それは、昔からあったさまざまな技術を、さまざまな営業的サービスを駆使して見せ方を変え、売っているだけにすぎないのです。デザインがオシャレだったりするだけで、僕はm、それ以外ないと思っています。なぜなら、インターネットの基礎的な技術は、既に開発が終わってしまっているからです
p140.おそらくですが、国は自らがウィニーを利用し、情報を流出してしまったことで、他のウィニー利用者を処罰することができなくなったのでしょう
p148.発泡酒と第三のビールは、美味しいビールを作り出すために考案されたものではなく、税金の安いビールに似たまずいものを一生懸命造っているというものです。シングルモルトよりも、グレーンウイスキーが造られるようになってしまったことも同じ原理です。発泡酒と第三のビールは、日本国内では普及しますが、世界的に見ればまったく売れない不思議な存在。それであれば、美味しいビールを造り世界に売り出す技術を磨いたほうが国益のためにも良いはずなのです
p152.著作権などの研究者であるスタンフォード大学のローレンス・レッシグがこう言っています。「世の中で人間が行動を決める要因は、道徳と法律と市場とアーキテクチャーの4つである」と。僕はインターネットによって引き起こされる問題の対処は、市場が決めることだと考えています
p162.事実以外のことを書かれた場合、本来であれば怒るべきだと考えているのですが、単に忘れやすい性格なのか、僕は怒ったり、人間不信に陥ったりしません。06年に、僕が失踪したなどと、ありもしないことを記事にしていた某オレンジ色の夕刊紙にしても、貴社の方と会うたびに、普通に会話をしてしまい、怒ったことがありません。これでいいのかな?と感じることもありますが、記者さんたちは上司から言われ、仕方なく現場に来ている可能性もありますし、夏の炎天下や冬の寒空の下、待っていたことを考えると、どうにも怒れないのです
p202.(小飼)でも、僕は変な会社こそ、上場してほしい派なんです。なぜなら、否応なしにディスクローズされますから。これが大事で、変な会社こそ市場に出て社会に顔を殴ってもらえという考えがあるんです
p204.(西村)監視されたくない人たちは、株式市場には上場しないですよね。カード会社のVISAとマスターって、株主の上に行くと実は同じ会社なんです。つまり実際に日本で使われているカードは、なんだかわからない会社に支配されてるということになる。でも、それを誰もおかしいとは思わない。そういう意味で株式市場が健全かというと微妙ですよね
p207.(小飼)佐藤優さんも、よくあの程度で留まっていますよね。できる為政者なら消しますよ。使えなければ消すしかない。自分で使えないものは消すことまで考えが及ぶ人でないと、為政者は務まらないのでは
p216.(小飼)結局、インターネットがやったことは、ただ一つで、世の中を極度に狭くしたことですからね
20071118074500
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