村上春樹「走ることについて語るときに僕の語ること」文藝春秋

公開日: : 最終更新日:2012/02/11 書評(書籍)



村上春樹の本を久しぶりに読んだ。しかも、こういった小説でないものを。少しマラソンに興味を持ち始めたここ半年ばかり、いろいろと道具をそろえたりした中で、意を決して購入したのがこの本だった。結論としては面白い内容であったし、文体など昔の村上春樹の小説を読んだときを思い出させたりするようなものでもあった。ランニングをかなり明確に意識しながら行っていることが見て取れる。走ることに対する考え方としても、それを踏まえた周辺の生活の方法としても、直接のランニングのノウハウとしても、いろんな意味で参考になる本だった




p15.たとえペースを上げてもその時間を短くし、身体が今感じている気持ちの良さをそのまま明日に持ち越すように心がける。長編小説を書いているときと同じ要領だ。もっと書き続けられそうなところで、思い切って筆を置く。そうすれば翌日の作業のとりかかりが楽になる。アーネスト・ヘミングウェイもたしか似たようなことを書いていた。継続すること―リズムを断ち切らないこと。長期的な作業にとってはそれが重要だ。いったんリズムが設定されてしまえば、あとはなんとでもなる


p18.ジョグ・ペースで1時間走るとだいたい10キロになる


p20.僕はチーム競技に向いた人間とは言えない。良くも悪くもこれは生まれつきのものだ


p23.昨日の自分をわずかにでも乗り越えていくこと、それがより重要なのだ。長距離走において勝つべき相手がいるとすれば、それは過去の自分自身なのだから


p31.走っているときにどんなことを考えるのかと、しばしば質問される。そういう質問をするのは、だいたいにおいて長い時間走った経験を持たない人々だ。そしてそのような質問をされるたびに、僕は深く考え込んでしまう。さて、いったい僕は走りながら何を考えているのだろう、と。正直なところ、自分がこれまで走りながら何を考えてきたのか、ろくすっぽ思い出せない


p36.誰かに故のない(と少なくとも僕には思える)非難を受けたとき、あるいは当然受け入れてもらえると期待していた誰かに受け入れてもらえなかったようなとき、僕はいつもより少しだけ長い距離を走るようにしている。いつもより長い距離を走ることによって、そのぶん自分を肉体的に消耗させる。そして自分が能力に限りのある、弱い人間だということをあらためて認識する。いちばん底の部分でフィジカルに認識する。そしていつもより長い距離を走ったぶん、結果的には自分の肉体を、ほんのわずかではあるけれど強化したことになる


p53.走ることにはいくつかの大きな利点があった。まずだいいちに仲間や相手を必要としない。特別な道具や装備も不要だ。特別な場所まで足を運ばなくてもいい。ランニングに適したシューズがあり、まずまずの道路があれば、気が向いたときに好きなだけ走ることができる


p57.1日のうちでいちばんうまく活動できる時間帯というのは、人によってもちろん違うはずだが、僕の場合のそれは早朝の数時間である。その時間にエネルギーを集中して大事な仕事を終えてしまう。そのあとの時間で運動をしたり、雑用をこなしたり、あまり集中を必要としない仕事を片付けていく。日が暮れたらのんびりして、もう仕事はしない。本を読んだり、音楽を聴いたり、リラックスして、なるべく早いうちに寝てしまう。おおよそこのパターンで今日まで日々を送ってきた


p59.10人のうちの1人がリピーターになってくれれば、経営は成り立っていく。逆に言えば、10人のうちの9人に気に入ってもらえなくても、べつにかまわないわけだ。そう考えると気が楽になる。しかしその「1人」には確実に、とことん気に入ってもらう必要がある。そしてそのためには経営者は、明確な姿勢と哲学のようなものを旗印として掲げ、それを辛抱強く、風雨に耐えて維持していかなくてはならない。それが店の経営から身をもって学んだことだった


p66.正直なところ、日々走り続けることと、意志の強弱とのあいだには、相関関係はそれほどないんじゃないかという気さえする


p66.僕はランニングをまわりの誰かに勧めたことは一度もない。「走るのは素晴らしいことだから、みんなで走りましょう」みたいなことは、極力口にするまいと思っている


p67.学校で僕らが学ぶもっとも重要なことは、「もっとも重要なことは学校では学べない」という真理である


p74.もうひとつの健康法は昼寝をすることだ。僕は実によく昼寝をする。だいたいは昼食のあとで眠気を感じ、ソファにごろりと横になって、そのままうとうとと眠る。30分くらいでぱっと目が覚める。目が覚めたときには身体のだるさが消えて、頭はとてもすっきりしている


p86.「そうですか。でもねえ、こういう企画って、実際に全部やる人ってあまりいないんですよ。適当に写真だけとって、途中は省いちゃうことが多いんです。ふうん、ほんとに走るんだ」世の中ってよくわからないですよね。そんなことが実際におこなわれているんだ


p100.筋肉は覚えの良い使役動物に似ている。注意深く段階的に負荷をかけていけば、筋肉はそれに耐えられるように自然に適応していく


p115.ぼんやりと生きる10年よりは、しっかりと目的を持って、生き生きと生きる10年の方が当然のことながら遥かに好ましいし、走ることは確実にそれを助けてくれると僕は考えている。与えられた個々人の限界の中で、少しでも有効に自分を燃焼させていくこと、それがランニングというものの本質だし、それはまた生きることの(そして僕にとってはまた書くことの)メタファーでもあるのだ。このような意見には、おそらく多くのランナーが賛同してくれるはずだ


p118.アメリカの病院にいくと、まず看護婦さんによる予診のようなものがあって、ここで脈拍を測るのだが、いつも「ああ、あなたはランナーなのね」と言われる。長距離ランナーは長いあいだに、きっとみんな同じような脈拍数になっていくのだろう。街を走っていて、初心者ランナーとベテラン・ランナーはすぐに見分けられる。はあはあと短く息をしているのが初心者で、静かに規則的に呼吸しているのがベテランだ。彼らの心臓はゆっくりと、考えに耽りながら時を刻んでいる


p143.明日が何を運んでくるのか、それは明日になってみないとわからないのだ


p187.僕はこの「道具の手入れ」というのが、生来苦手なのだ


p222.僕はあまり人づきあいの良い方ではないが、トライアスロンの選手たちとは気軽に素直に話をすることができる「。我々はこの社会にあって、どちらかといえば特殊な人種なのだ




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