三枝匡・伊丹敬之『「日本の経営」を創る』日本経済新聞出版社

公開日: : 最終更新日:2011/09/07 書評(書籍)

2人の対談を本にしたようなもの。2人ともすごく偉人に見える。実際、そのとおりなんだろうと思う
もうアメリカ系の外資企業の行動パターンというのを的確に描写してくれている前半部分が気味がいい
しかし後半部分になると、なぜかメモすべきと思うようなことが見あたらなかったりというのはどうしてだろう。多分、読み手の問題
hiog: 三枝匡「戦略プロフェッショナル」日経ビジネス人文庫
三枝氏の本は読んだことがあるし、まだ買って読まずにいるものもある。伊丹氏のも、この本で触れられていた本は是非読んでみたい

p019.三枝 短期の目先で株主に報いることばかりに気を遣うと、長期的には株主も損してしまう経営に追い込まれかねない。日本では今、高い配当性向のアメリカルールを取り入れることが正しいという主張がよく聞かれる。
p027.三枝 これではアメリカ企業は日本に勝てないだろうと思ったんです。その時点で20年以上連続で増収増益を続けている優良企業でしたが、例えば、幹部や社員が短期間で大勢辞めるということがありました。引き継ぎもせずに人が消えてしまう。ひどいときは部下と一緒にゴソッと消えてしまう。日本の組織が持つ継続性の力に対して、アメリカ組織の非継続性はとても非効率だということを体で感じました。残業も少ないから、一つのことを仕上げるのにものすごく時間がかかる。アメリカ人がこんな調子で働いている限りは、当時の日本の組織には絶対勝てないと思ったわけです。荒っぽいフィーリングで言えば、当時のアメリカ企業は、転職率の高さといい加減な引き継ぎという一点だけで日本企業に対して効率において二、三割は不利になっているという感じでした
p028.三枝 アメリカ人は意思決定のときに、一面的なことを取り上げてバサッと決めてしまっている。ディシジョンが速いというのはアメリカの強さと言われますが、アメリカ人は結構、表層的でいい加減に決めていることが多いと私は感じました。アメリカの大統領がイラク戦争を始めたときも、多分あの調子で決めちゃったんだろうなと邪推できるような、アメリカ人が一人のリーダーの勢いで物を決めるときには特有の大雑把さがあると感じました。日本企業の組織の継続性という強みは、やがて組織の硬直性という弱みに変わり、最終的には日本的経営の劣化に結びついていった面があるのですが、一方、米国企業の組織の断続性は日本企業よりひどいものがあります
p030.三枝 アメリカ人の経営スタイルは、自分の利益ばかりを主張して、短期間で非常にきつい要求をする姿勢で、私は合弁会社の日本人トップとして、日米の二つの親会社の間に挟まれて苦労しました。住友系親会社の人々は概しておとなしくて紳士的で、アメリカ人がえげつなく要求してくるときには翻弄されがちでした。おそらく日米の通商交渉の場などでも、そうだったのではないかと私は推測しています。それからアメリカ流経営における管理志向の強さ。細かい数字までチェックされ、日本の社長といっても、アメリカ本社に聞かないとなにも決められない組織でした。社長らしいダイナミックな役割は回ってこなくて、本社に行けばただのミドル程度の扱い。経営者としての面白さなんて、何もないと思ってね。そこらあたりでアメリカ流経営に対する私の見方は大きく変わったと思います
p033.三枝 嫌になっちゃった体験の最たるものは、アメリカ本社の担当者が転職で姿を消すたびに、日本のことを知らない若いアメリカ本社のマネジャーが、別に上司とは限らないんだけど、いかにも権限があるような顔をして、入れ替わり立ち替わりやってくる。そのたびに日本の過去の経緯から始まって同じ説明を繰り返さなければならない。3年くらい経ったあたりから、私はくたびれちゃった(笑)。この組織の断絶性は一体何なのだと
p035.三枝 でもよく考えてみたら、日本の会社がアメリカに行って、現地の経営を現地人のマネジメントにすべて任せているかっていうと、そんなことないんですよ。理想としてそういうことを語る人は多いけど、現実には本社に伺いを立てないと動けない組織が圧倒的。つまり、その点じゃアメリカ企業も日本企業もなくて、お互いさま。だったら私の結論は、アメリカ人に日本で現地人として使われるより、日本人として海外で現地人を使う立場のほうがいいなと(笑)
p040.三枝 辞めることを決めた途端に、自分が信頼していた部下が私に対して面従腹背になっていたことを思い知らされるような出来事がいろいろ起きて、組織の上に立つことの難しさや、自分の経営スタイルの欠点を思い知らされました。愛情をかけた部下に裏切られることの辛さ、それも結局は自分のせいだという自省を迫られた時期でもありました
p040.三枝 GEのジャック・ウェルチは、会社を買収したら90日で体質変換を完了して支配下に置くことを原則にしましたが、そんなやり方はその会社の良い面、つまりその会社の「らしさ」まで壊してしまうのは必至で、私は愚かなやり方だと思います
p042.三枝 アメリカのベンチャーの世界では、技術者を含めてアメリカのトップクラスの人材が集まって、1社の成功の陰に100社の失敗があるという消耗戦をやっていました。その戦いの原動力はマネーです。アメリカ人のお金への渇望です。アメリカ流経営の弱みとして前述した「短期リターン志向」が最も極端に出ている世界で、私はむしろ「インスタント成金主義」と呼んだ方がいいと思いました。エンジェルなんて美名で呼ばれる人々も実は偽善的で、いざ投資先がおかしくなるとエゴ剥き出しでしたね
p044.三枝 アメリカ人は人の上に立つと、やたらに「チームが大切」と言う傾向があるんですよ。日本の外資系に勤めたことのある多くの人たちに思い当たる節があるはずです。私も昔それを聞いて新鮮に思ったことがあるのですが、そのうち胡散臭いことに気づいた。あれはアメリカ組織の弱みの裏返しで言っているんです。チームなんて言っておきながら、それは状況がいいろきだけで、悪くなるとすぐに部下を追い出すんですから。アメリカでレイオフされたアメリカ人は、そういう目に遭ってもそれで当たり前の雇用関係だと思っているから、黙って自分の私物を片付けて出て行く。でも日本人は、ビジネスマンとして「志」を会社にかけた人ほど、落胆して出て行きます
p046.伊丹 外資系の金融機関からヘッドハンティングがかかった男がいるんですが、彼は結局その話を受けなかった。そうしたすさまじさがやはり嫌だったからだそうです。外資系では上司が部下の人事権を完全に持ってしまうので、「上司の靴の底をなめる」覚悟がいる、それは自分としては嫌だ、と言っていました
p050.伊丹 退出はアメリカのイデオロギーだからである。ハーシュマンは、アメリカ建国が古いヨーロッパから退出した人々がアメリカに参加することによって実現したことによって、そしてアメリカ建国以降も西部開拓時代にも西部開拓は東部から不満を持って退出して西部に移動した人々によって達成されたことによって、退出はアメリカのイデオロギーになった、という
p051.伊丹 アメリカは参加の国であり、その「意図的参加」ということの裏返しとしてその参加対象に不満があるときには「退出」という形で不満への抗議声明をする。しかし、退出のメカニズムが発達すればするほど、告発のメカニズムが機能する余地は小さくなる。告発する能力のある人々からわれ先にと退出してしまうからである
p063.伊丹 国全体のマネーフローのレベルで見ると、使い道はアジアにあったはずなんです。非常に典型的な例は、日本興業銀行という銀行ですよ。1970年代までに歴史的使命がもう終わっていた銀行です。その銀行が、日本の金融市場で生き残ろうとプライベートバンキングのような世界に入ってきて、80年代には今までやっていなかった産業金融以外のいろんなことをやり始めるんですよ。90年頃には、大阪の料亭経営者だった尾上縫さんに何百億円もだまし取られるとか、そういうたぐいのことがどんどん起き始めた
p076.三枝 若手の育成が非常に難しくなってしまったのは、結局、組織上層に上がっていった人たちが、仕事の権限を自分で抱えたまま上がっていったからなんですよ。そのために若手層には、普通のルーチン的仕事しかやらないサラリーマン人間が増えてしまった。非常に優秀な人材さえも、そうなってしまったということだと思います
p132.伊丹 企業は誰のものかと言えば、どうも日本では従業員のものだとみんな思っている。市場での取引も長期で継続的な系列的関係がいいと多くの人が思っている。組織の中で働く人たちとお金、権力、情報などを分け合うときにも、日本とアメリカで原理が違うと思った。アメリカはみんな一元化してかつ集中してしまうんです。偉い人のところに情報が集まり、金も集まるようにするけど、日本はみんな分散します。平等的にもしようとする。そうすれば、組織内の情報の流れや蓄積にプラスが大きい
p156.伊丹 人間の生体を切り刻んで、改めてくっつけ合わすような作業を、市場原理主義は平気でやれと言うわけです。そんなことはムダが多すぎますし、生体なら途中で死んでしまいます。情報の流れも蓄積もなくなりますよ
p158.三枝 四半期決算で利益額が不足になると、全世界の子会社に来月は利益を出せと指示が来る。人減らしや新規採用凍結の方針も、往々にして一定比率の割り当てが来る。ついこの前まで戦略的に思い切って経費を使えとか、赤字でもいいから攻めろなどと言われていた方針も、舌の根も乾かないうちにひっくり変える。そうなると、きちんと予算どおりの経営をしている子会社でも、必死に実行しているプロジェクトを中断させざるを得なくなる。しばらくすると再開せよと言われるが、ストップ。ゴーを繰り返すことによる組織の意欲喪失が議論されることはない
p177.伊丹 生産という大きな投資をしたサンクコストを持った人たちの側に、組織の中では不思議とパワーが発生するんですよ。こんなものを背負っているんだから、われわれのことを理解してくれ、というパワーです。他人を押しのけたいとかいう悪意のパワーではないんです
p179.伊丹 機能別組織を長くやっていると、今後は機能間セクショナリズムの壁ができ始める。そうしたら、また壊す。どうもそういう行ったり来たりを意図してやるということが、一般的な解決策なのではないでしょうか
p183.三枝 大組織のまま事業をやっているときの、あの隔靴掻痒の、何もかも自分の手が届かないような感覚というのは、私は本当に嫌なんですよ(笑)。上も下も、皆がやる気を失う原因はまさにあの感覚なんですよね
p194.伊丹 日本では人がある会社を辞めて次のことに取りかかるというパターンではなくて、同じ会社の中で次のことを手がけるということですね。日本企業がある程度の投資をして競争性を保ったのに対して、アメリカ企業は配当や異分野への多角化で、鉄という産業を維持するための投資資金を自ら枯渇させてしまった
p268.伊丹 日本では組織の部外者が改革を行ったケースというのは、ないわけではないですが、どちらかと言えば少ない。部外者というよりむしろ辺境なんですよ。傍流出身者が組織の中央に入ってきて。ポイントはメイン、本流ではなかったということです
p291.伊丹 私の友達の中小企業の社長が経営の相談で電話をかけてくる話をしました。5分くらい向こうの話を聞いて、まだ全体像が見えないときには「はい、終わり。失敗する」と言うんです。つまり、シンプルに理解できないわけですから。そんなの、現場で動くわけがないんです
p314.伊丹 ロームの研究開発の人たちは、チームで協力し合ってうまくできているという話があります。コツの一つは、会社の費用で夜の飲み会を上司の許可なしに勝手にやっていいんです。すごい金額の予算が毎年ついていて、京都市内に四、五十軒提携してるお店があって、そこに行ってみんな勝手にサインしてこいと。要するに、フェース・トゥー・フェースで、オフサイトのコミュニケーションを自然にとりやすいように、わざわざ仕組みを作ってるんですよ
p343.伊丹 人間とはどういうものかということについての、多くの日本企業の経営者、そして管理職の人たちに共通した考え方があると思います。それは、ベーシックなところでは、人間なんてどうせ個人個人、そんなに違いはないと。多少は正価の違いなどが出るかもしれないですが、それをあまり大きく見ない方がいいと。人間みな平等とは言いませんが、能力に大した差はないんだというスタンスです
p364.三枝 採用候補者でコンサルタント出身の人が来るとき必ず言うんです。「あなた、本当は自分でもできるかどうかわからないのに、お客に過激なことを言ってお客の不安心理を増加させるのが今までの商売のテクニックだったでしょう(笑)。ミスミに来たら、自分でやれと言われたら自分で実行できることを言ってください」と
p369.三枝 アメリカの社長には、もと会計士だった人がたくさんいますよね。マネー志向の経営が強い国ではそういう出世ルートが発達するんです。そういう経歴のアメリカの経営者は、社員の人減らしだとか、事業の切り売りのことをわりと簡単に口にするというのが私の経験です

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