稲垣道夫「カーボン-古くて新しい材料-」東京工業調査会

公開日: : 最終更新日:2012/03/30 書評(書籍)



身近なもの、工業的に使用されているもの、可能性を秘めているもの、という3つの分類で紹介していく。説明のため、炭素とカーボンとで異なる意味を持たせたりと、厳密な中にも、図示を多用するなどわかりやすいし、見ていて飽きない


ベストセラーにはなりそうもないけど、かなり高く評価した本


ほんとカーボンの八面六臂の活躍に感心。ここまでいろいろなことを簡潔にというバランスにも感心


連想できる。読書の幅が広がる。ちょっと前、コンクリートに関する同様の解説本があって、それも面白くて買いそうになった。コンクリートで使われるマトリックスという言葉に新鮮なものを覚えた。これも今度読んでみたいと思う




p25.蒸発したガソリンを活性炭で吸着することによって大気中へ放出されることを防ぐとともに、その活性炭を通して空気をエンジンに送ることによって吸着されたガソリンを脱着させて、再利用する工夫がなされ、多くの自動車に搭載されている。自動車搭載キャニスタ


p35.カーボンブラックは、原料に炭化水素を用い、それを不完全燃焼させることによって作る方法と、熱分解させる方法がある


p38.カーボンブラックの一次粒子中では、小さな網平面が表面に対して同心球状に配列しており、中心に近いほどその並びが乱れている。網平面のこのような配列は、大きな粒子からなるサーマルブラックでよりはっきりしており、小さな粒子であるファーネスブラックでは、乱れが多い


p55.高速道路の補強の必要性が、阪神・淡路大震災以後強く指摘された。その方式には、カーボンファーバー束(ストランド)を引張力を加えながら巻き付ける方式とカーボンファイバーを一方向に並べたシート(カーボンファイバーシート)を巻き付ける方法の2つがある


p57.約7μmの径を持つカーボンファイバーを水の中につり下げておくことによって、水の透明度が増し、浄化されることが見出された。カーボンファイバーによる水の浄化は、200カ所以上の湖や海辺で行われ、透明度が増すのみでなく、魚の繁殖に適した水環境が作り出されていることが確認されている


p69.重油に汚染された砂の上にこの膨張黒鉛を置くことによって、重油を吸い上げ、砂に混ざった重油も回収することができる。この膨張黒鉛は重油と同様に、血液や生体液も大量に吸着することが知られ、医療用の用途も期待されている


p76.CD、DVDなどの磁気記録媒体は、磁性体の薄膜がアルミニウム基板上に、さらにその表面に薄いDLC膜が蒸着されている。DLC膜は、ダイヤモンドに匹敵する強さを持つと同時に透明であり、磁性膜を機械的な衝撃から保護するとともに、記録を読み取るためのレーザー光を弱めることなく磁性膜に到達させる役割を果たしている


p79.ダイヤモンドは最も硬い物質であり、酸・アルカリなどの化学薬品に侵されることもなく、基本的に無色透明であり、電気絶縁体である。ほとんどの材料において、電気をよく通すものは熱もよく伝えるが、ダイヤモンドの場合は、電気をまったくといってよいほど通さない電気絶縁体であるにもかかわらず、熱をよく通す点が特徴的である


p80.ダイヤモンドライクカーボン(DLC)は優れた強度を持つとともに、ガスバリア特性(ガスを透過させない性質)があり、最近ペットボトルの内面の被覆に使われようとしている。外部からの酸素ガスの侵入を防ぐとともに、ボトル内部からの炭酸ガスの拡散を防ぐことができるため、炭酸飲料の容器として使われる


p84.固体中の電子はある限られたエネルギーの幅を持つ状態(エネルギーバンドと呼ばれる)をとっており、そのバンドに入りうる電子の数は決まっている。一番高いエネルギーを持つバンドを伝導バンド、その次のエネルギーバンドを充満バンドと呼ぶ。伝導バンドと充満バンドの中間のエネルギーを電子がとることができず、バンドギャップと呼ばれる。電気伝導は、固体中の電子が移動することによって起こる。いっぱい詰まったエネルギーバンドにある電子は移動することができないが、まだ電子で満ちていないバンドにある電子は移動でき、電気伝導を生じうる。ほとんどの金属類は、伝導バンドが未充満であるために、電気を伝えることができる伝導体である。


p138.カーボン材料が原子力分野で使われるのは、炭素原子は質量が小さく、高速中性子(約0.1MeV以上のエネルギーを持つ)効果が大きく、中性子を吸収する効果が小さいという2つの優れた核特性を持つことによっている。それに加えて、高温での力学特性にも優れているため、より高温の核エネルギー利用を目指した原子炉の改良および開発が可能となった


p153.ガラス状カーボンが、等方性である、非常に硬い、ガスを透過させないなど、それまでんおカーボン材料の性質とは大きく異なっている。ガラスのように透明でないことを除けば、むしろ窓ガラスと共通するところが多い


p158.人工心臓弁:カーボン以外の材料のほとんどが血液と反応して凝固させ、血栓を作るが、カーボン材料は血栓を生じない数少ない材料であり、軽量であることなどの条件も備えている


p166.古くから下痢止め薬の主成分は活性炭であった。また、活性炭が人工腎臓や人工肝臓の中で吸着剤として使われている。急性中毒時にも活性炭が経口投与されることがある




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