デブラ・E・メイヤーソン「静かなる改革者」ダイヤモンド社



タイトルやその考え方には唸らせるものがあったが、実際に内容を読んでみると、アメリカの本の邦訳によくある、退屈な事例をぐつぐつと申述していくような感じで、全体としては、あんまりだったかな





p8.ニューヨークの有名な法律事務所で働くアフリカ系アメリカ人弁護士は、入所2年目のころ、シニア・パートナーから入所後の感想を聞かせてほしいと頼まれたという。彼女が他の同僚とは異なる経験をしているだろうと考えたからだ。シニア・パートナーが彼女の考えを聞いたという話はあっという間に事務所中に広がり、ほかの所員ももっと率直に考えを表現できるようになった。ポジティブな逸脱を探し、尊重するリーダーは、他者が安心してリスクを冒し、信念に基づいて行動できるように保証するだろう



p42.有名な例を挙げれば、ロバート・レッドフォードの価値観やビジョンは、映画産業の基準からはかなり逸脱している。しかし、彼はプロデューサー、ディレクター、そして主役として成果を上げ続けている。『ニューヨーク・タイムス・マガジン』誌によれば、レッドフォードは、「自分が嫌っている撮影所という場所で仕事を続けている。大事なのは、『幸福の条件』のような通俗的な映画に出演する一方で、独立系の映画制作活動を継続しようという強い意志だ」。同誌は、このあからさまな矛盾は、「躁うつ病」に似ていると述べている。いや、レッドフォードは躁うつ病などではない。ハリウッド的な映画制作とはまったく異なる価値観やビジョンを追求する一方で、業界の本流にも参加している。インサイダーであると同時にアウトサイダーでもある。同誌が指摘しているように、「レッドフォードは、片足をエンタテインメントの川岸にしっかりと下ろし、水位の高まりや川の広がりを見てきた。……たいていのスターとは異なり、レッドフォードは少しずつ身売りしようとは考えていない。独立を強く求め、引き換えに、直接、悪魔と取引しようとしている」



p78.するとそのとき、机の上の一枚の写真が目に入った。「僕は、彼の奥さんと子どもたちの写真を指差して、こう言いました。どうして君はストレートだと公言しているのかな。僕はパートナーの写真を飾ってなんかいないよ。これみよがしなのは僕じゃなくて、君のほうに見えるな」彼はすぐにトムの言いたいことに気づき、「一本取られたな」と答えた。トムは陽気な皮肉を使って、何を「普通」だと考えるかによって、誰が何を「これみよがしに言っている」のかも大きく変わってくることを指摘した。私たちは日々、このような選択を繰り返している。価値観やアイデンティティを脅かす言動を黙認するか、はっきり主張するか。意図的な攻撃を無視するか、反論するか。ステレオタイプ的な期待に応じるか、反抗するか。インサイダーとして見過ごすか、アウトサイダーとして立ち上がるか。立ち話であれ、正式の面談であれ、日々の「出会い」(encounter)は、同調や抵抗を示す機会を与えてくれる。「出会い」とは、社会学者のアーヴィン・ゴッフマンが定義した「対面での、始まりと終わりのある集中的な相互作用」を意味する



p184.1人、または複数の静かなる改革者が小さな行動を起こすとき、その行動は背後にあるより大きな問題点を明らかにするきっかけとなる。これは、他者の関与をもたらすために小さな勝利を用いる戦略に匹敵する。MITの生物学教授、ナンシー・ホプキンスの例を見てみよう。ホプキンス教授は理学部で何度も性差別を目撃して怒りや失望を感じ、MITの学長に手紙を書こうと思い立った。しかし、先輩教授から何と言われるかも懸念された。そこで事前に、尊敬する女性の同僚に手紙を見せることにした。「手紙を見せるのには勇気が要りました。私は不安を押し殺さなくてはなりませんでした。本当に優秀なら女性でも自分で道を切り開けるはず――そう育てられてきたからです。差別という問題に直面していても、それは同じでした」驚いたことにその同僚は、自分も手紙に名を連ね、一緒に学長に会いに行きたいと言った。実は彼女も一人で悩んでいたのだった。2人が理学部の女性研究者17人全員を訪ねてみると、1人を除く全員が同意し、手紙に署名させてほしいと言った。誰もがかつては性差別を個人的な問題としてとらえ、沈黙していたが、今では学部全体をむしばむ共通の問題と位置づけていた





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