馬場啓一『「いき」の作法』PHP文庫

歯が悪いことはみっともない。これは身につまされる。小さいときにもっと気をつけていればよかった。いまは電動歯ブラシ、フッ素歯磨き、フロス、歯間ブラシ(電動のものも)、リステリンしてる。そして定期的に歯医者でクリーニングも
日本人は車をくつろぎの居間のように考える。最近は、特にその傾向が激しいのではないかと思う。VOXYとかSERENAとかSTEPWGNとか。理由の1つには、都市部の渋滞があると思う。とても馬を駆って疾走できず、諦めて落ち着いてみるしかなかったりする
都市とムラの両方で、何か新しいルールが出来たらいい。合意とするのはどうしたらいいか

p47.コートを着るのも、脱ぐほどではないにしろ、面前で晒すのは美しくないと考えるから、相手の元を辞去して、玄関の外で着たりすることになる。西洋人は平気で、帰り際に堂々と相手の目の前で、これを着用に及ぶ。こういう細やかな差異が日本と西欧の間にはしっかり横たわっているのだ
p61.世界中を見渡しても、この2つをしっかりポケットにしのばせている民族はほとんどないことに気づく。多くの人々は鼻紙はもちろん、ハンカチさえ持たずに生活している。洟をかむときに紙を使う民族は、じつは少ないのである。西洋人だって、洟をかむのにハンカチですませてしまう
94.ニューヨークでレストランに予約を入れるときの英語がただ二言、リザベーション・プリーズだった、と知ったときの驚きを、今でも記憶している。思えば、レストランの予約ということに独特の意味と重さを初めて感じたのは、そのときだったかもしれない
p137.キューバ産のハバナ・シガーは、ケネディ大統領がカストロと揉めたとき以来、アメリカでは禁制品になっている。もっともシガー好きのケネディ本人は、法律を施行する寸前にワシントン中のハバナを買い占めてしまったらしい。その数五千本という。しかし、それらを全部すう前にダラスで凶弾に倒れてしまった
p138.西欧の場合、親のしつけのせいで、歯が悪いことはみっともないという常識が行き渡っている。じつにこまめに歯の治療をする。歯が悪くては出世が出来ない、という話もあるくらいだ。顔と顔による接触が多いから、歯が悪いと口がくさい、相手に嫌われてしまうのである。まめに歯を磨く習慣もこのためだ
p153.基本的に女性はか弱く、男は強い。これがレディ・ファーストの理念である。だが日本には、たくましい母性が一家を率いるという発想が古来からあった。要するに母系社会ということ。農耕民族は通常これを踏襲している。ここが、狩猟民族であり、牧畜を生業とする西欧人とは、大いに趣を異にする点である
p171.そもそも携帯電話は、普通よりこわもての連中がいち早く利用し出したというのもあって、公共機関はもとより一般の人々も、これを咎めだてするのは勇気が必要だった
p179.日本人は車をくつろぎの居間のように考え、西欧人は馬車の延長と考えている。ランドウとかキャブリオレ、クーペといった呼び名は、馬車時代の名残である
p193.欧米人だって人間だ。トイレットに行く必要が生じることがある。そういうときには女性の場合だと、電話をしてきますと断る。レストランやカフェは、トイレットと電話室が背中合わせになっていることが多いから、これが成り立つ。電話なら携帯電話がありますよ、などと親切そうに言ってはならない
p196.戦後、日本古来のムラ社会の枠組みが壊れ、地方の農村から都会へ人口が流出し、一種の無法状態が都会に生まれた。昭和30年代だ。都会に来た人々は企業の社宅や民間のアパートに押し込まれ、仕事をするためのルール以外を与えられなかった。それまでムラが決めていた生活全般の細目について、都会では誰も教えることがなかった。一方、地方はといえば、核となる人間がこぞって都会へ出て行ってしまい、ムラには年寄りと子どもしか残らなかった。ムラはその機能を停止するしかなかった。こうして都会もムラも、混乱の中で日を送ることになる。その間、誰も新しい社会体制の中での新ルール、新日本人ルールというようなものを考えなかった。作法の先生と呼ばれる人は大勢いたが、過去の事例を引き合いに出すだけで、新しく未経験な状況に対応する答えは教えてくれなかった。教えられなかったというのが、その正確なところだろう

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