デュラン・れい子「一度も植民地になったことがない日本」講談社+α新書

公開日: : 最終更新日:2012/01/30 書評(書籍)



通勤電車の中で、乗客が読んでいた。それを脇目で見て興味を持って読んでみることにした一冊


少し国粋主義的な内容。しかし、正しい。渡部昇一の日本史ほどではないけど、かなり肯定的に日本の歴史を捉えている。それでいい。特に「南蛮人」と言った理由が、素朴な感情として衛生面で日本ほどに洗練されていないからだというのは、おもしろかった。宣教師への指示「日本人と会うときは風呂に入り、体を清潔にしろ」というのがいいエピソード




p29.ともかく自分の意見を述べたがるのがアメリカ人。これが民主的ということかと聞いているこちらが感心するくらい、バカバカしいことを積極的に話す場面に何回も遭遇した。反面、ヨーロッパ、特にイギリスは、日本人の感覚に似ていると思われる。その問題に関して自分が十分な知識がないとわかっている場合、日本同様、黙っている人も多い。ただし「言うべきときに自分の意見をはっきり言う」ことをしないのは、ヨーロッパ人には日本の不思議のひとつと映ってしまう


p33.アングロ・サクソンが単純という根拠の(こういうことを言うとイギリス人やアメリカ人に袋だたきになるかもしれないが、一般的にヨーロッパの人々はそう思っているから申し上げると)象徴は、あの「カウボーイ」である。ハリウッド映画の例を出せばどなたも納得されるはず。腕力で勝負を決めたいアングロ・サクソンのイギリス、アメリカに、とことん議論し合うことをよしとするラテンのフランスが抵抗している今回のイラク戦争は、この対比の好例ではないかと思う


p80.「でも、それが戦争というものではないでしょうか。日本が戦争を仕掛けたのはよくないし、また勝てると思ったのもバカだったと思います。でも、あの頃の日本は経済封鎖されていたことも事実なのです。なにしろ日本は資源がなくて…」


p81.「それはそれは、本当に不幸でした。もしあなたがインドネシア人が書いた本を読めば、または日本人の書いた本を読めば、考えが変わるでしょう。人間は限られた情報で他人を判断しがちですから」


p90.「ゲスト・ワーカー。つまり外国からの労働者。オランダ国籍を持っている人もいるし持っていない人もいるけれど、特に旧植民地からの人たちのことですよ」ガーンと頭を殴られたような気がして、ため息が出た。オランダに住むようになって、「なんてこの国の人はインターナショナルなことか!」と感激したものだ。なぜならオランダでは、私が学生時代にロンドンで体験したような人種差別を受けることがまったくなかったから


p93.信長に続く日本の為政者たちがキリスト教を恐れたのは正しい判断だったと思う。もしキリスト教布教を認めたら、日本はスペインかポルトガルの植民地になっていたに違いない。ローマ法王の名において政治が動かされていたヨーロッパに比べ、そのころの日本はすでに政教分離がなされており、格段に進んでいたのである。そのうえ、日本に上陸したバテレンたちが驚いたのは、日本人の清潔さであったという。バテレンたちはアジアの端の端に、今まで征服してきたアジア、アフリカ諸国とはまったく違う、大文明国を発見したというわけだ。そのころのヨーロッパは不衛生極まりなかった。このあとの17世紀に建てられた、今でも壮麗なヴェルサイユ宮殿さえトイレは少なく、華やかなイメージで語られるマリー・アントワネットやポンパドゥール夫人も、おまるで用を足し、それは宮殿のまわりにぶちまけられていたという。体臭をカバーするために香水が発達し、優雅に結い上げたヘアスタイルの中はシラミやダニでいっぱいだったと聞けば、日本人なら誰でもあきれてしまう。バテレンたちが日本人の清潔好きにカルチャーショックを受けたことは容易に想像できる。そのころのイエズス会のリーダーは、部下の宣教師たちに「日本人と会うときは風呂に入り、体を清潔にしろ」と厳しく命じたという。「そのころだって、汚れた体で体臭の臭う宣教師たちの話など聞きたいとは思わなかったろうな」と想像して、ニヤニヤしてしまう私なのだ


p96.当時の日本人は、バテレンたちのもたらしたヨーロッパ文化にコンプレックスを持たなかったばかりでなく、自分たちと異なる文化としてのみ興味を持ち、敬意を表した。それは「地球は丸い」とバテレンたちから聞いた信長が、即座に納得したという逸話からも窺える。さらにおよく知られているエピソードだが、バテレンたちが献上した黒人奴隷を見た信長は、家来に言いつけてタライに水を張りゴシゴシ洗わせたという。ところがその黒い肌の色が落ちなかったのを見て「あぁ、世界にはこういう人間もいるのだ」と納得し、その後は森蘭丸などと同じ近習の一人として召しかかえ、「ヤスケ」という日本名をつけて連れ歩いたという。この時代の日本は白人崇拝も黒人蔑視もしないばかりか、奴隷制度さえなかったというのだから、このあと、アメリカへ奴隷輸出をはじめるヨーロッパに比べ、何という文化国家であったことか! この歴史をヨーロッパ人が知らないのはしかたないとしても、日本人で関心のない人が多いのは残念というしかない


p106.独断と偏見だが、南蛮文化が日本に伝わったとき、日本は中国とサヨナラしてヨーロッパを選んだのではないか。「感性」という観点から見て日本といちばん近いのは、ヨーロッパの中でもフランスかもしれない。両国とも女性的嗜好が強いからである




20100627212100


google adsense

関連記事

no image

ケン・ブランチャード「ザ・リーダーシップ」ダイヤモンド社

リーダーシップのいろはが、ストーリー仕立てでわかりやすく説明されている。ストーリーが陳腐になりがちな

記事を読む

no image

鴨下一郎『ひとつ「捨てると」人生がひとつ「楽になる」』新講社

期待する路線とは少し違った。というのもあまり理屈だったことは書かれておらず、かなりさらっと書き流した

記事を読む

no image

本田直之「レバレッジ・シンキング」東洋経済新報社

いつも思っていたこと、自分がすでにやっていることが、すべきこととして書いてあることはうれしい。しかし

記事を読む

no image

朝日新聞社編「『育休父さん』の成長日誌 育児休業を取った6人の男たち」朝日新聞社

育児休業した6人の男性の文章をまとめ、最後に弁護士による男性の育児休業の解説と実際の取得者に対して行

記事を読む

no image

澤一良「一番わかりやすい整理入門」ハウジングエージェンシ-

整理対象を、スマイル、アクティブ領域、スタンバイ領域、プロパティ領域、スクラップ領域に分類することか

記事を読む

no image

五十嵐順子「いちばんやさしいネットワークの本」技評SE選書

20120527142708 タイトルに偽りなし。全体の理解のために必要。だだし、やさしすぎるので

記事を読む

no image

池谷裕二ほか「ゆらぐ脳」文藝春秋

あっという間に読み終えたほどの平易な内容。期待に反して内容は薄かったものの、なかなか示唆に富む記載も

記事を読む

no image

ピーター・D・シフほか「なぜ政府は信頼できないのか」東洋経済新報社

序章で、すべてが語られている。父親の恨み。父親の寓話を現在まで引き延ばし、少し先まで物語を進めて終わ

記事を読む

no image

ひすいこたろう『心にズドン!と響く「運命」の言葉』王様文庫

ガンジーのこの言葉って好きなんだよなあ。英語で Good travels at a snail's

記事を読む

no image

苫米地英人「頭の回転が50倍速くなる脳の作り方」フォレスト出版

読了の所要時間は1時間くらい 英語のドラマをずっと見続けるというのはおもしろい方法だ。内容によって

記事を読む

google adsense

google adsense

ドコモ「dアカウント」と「ポイント共有グループ」の整理

20181106112305 ドコモに3回線MNPの顛末(2

ワイモバイルにMNP

20181104115802 この記事を見て、小一時間考えてMN

ドコモに3回線MNPの顛末(2018/09)

20181029231515 ちょうど1カ月が経つので、思いつく

キャッシュレスまたはクレジットカード

20181023225403 政府がキャッシュレスを進めているみ

MediaPad M3 LTE プレミアムモデル購入して2か月

20170409130135 もう2か月が経ってしまったけど、記

→もっと見る

  • 名前:Max 年齢:人生の2合目くらい 誕生日:夏の暑い日 一言:他言無用ということでお願いします
  • あわせて読みたい
  • にほんブログ村 本ブログへ
PAGE TOP ↑