青木高夫「ずるい!? なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか」ディスカヴァー携書

公開日: : 最終更新日:2012/03/06 書評(書籍)



内容がコンパクトにうまく整理できている良書


ホンダの人。排ガスやF1のルールについての言及


よーく、理由を調べてみようという感じ。黙らずに、対話を試みましょう、という感じ。べつに、対話せずに退去してもいいかもしれない


問題は、ルールとその前提をよく分かっていないだけ。ルールはなるべく知っている方がお得だということの再確認。別に、「よい子になれ」ということでなく、人間の世界を規律づけているものを理解すれば、動きに無駄もなくなる




p57.あるとき、私は日本の自動車ディーラーを見学した米国のビジネスパーソンから、こんな質問を受けたことがあります。「優秀なセールスマンは将来どうなるんだい?」私はあまり深く考えずに「将来の店長候補だよ」と答えました。すると、彼から「そんなバカな話があるか。セールスパーソンの能力と店長の能力はまったく別のものだろう。なんでマネジメントの経験のない社員を店長にするんだ」と反論されてしまいました


p85.つまり、スキージャンプのルール変更の目的は「極端な減量をしない健全な選手の育成」ということです。基準に身長と体重のバランスを考えたBMIを使用したのもその現れでしょう


p87.「146%ルール」を「ジャパン・バッシング」だと決めてしまうには無理があります。というのは、現在、日本のジャンプ陣が表彰台を独占しているわけではないにもかかわらず、国際スキー連盟は2010年から「146%ルール」を「145%ルール」に変更する予定なのです。これは明らかに「ジャパン・バッシング」ではありません


p89.歴史ある欧州のコンストラクター、フェラーリでさえも、かつてはホンダと同じ目に遭ったことがあるということです。そう考えると、この件も本当にジャパン・バッシングであったのかという疑問が生じないでもありません


p91.レースというのは似たようなレベルの仲間が競ってこそ面白いのだ。1チームが勝ちを独走しては面白みがなくなってビジネスとして成り立たなくなる。それをわかってほしい」という主旨だったと思います。この2年後に、マクラーレン・ホンダの「勝ちの独占」が起きたので、バレストルの危惧は現実となったわけです


p99.ビゼールは、柔道が青少年の心身に与える健全な影響を信奉しているようで、これは、おそらく自分の経験に裏打ちされているものだと思います。実際、故郷であるティンカに道場を作っているし、途上国でのこうした活動を積極的に支援しています。祖国の道場で、孤児や貧しい家庭の子供たちを集めて柔道を教えたときには、「柔道をスポーツと考えたことはない、人生に処す道として指導したつもりだ」と述べてもいます


p104.マーケティングの面から見れば、ハーレーダビッドソンの二輪車には他社にない特徴があり、それが趣味性の強く、燃費や取り回しの良さがすべてではない大型二輪車の世界では強みになっているのです


p112.30年が経過した今日、結局GMとクライスラーは破産法による再生を図るという事態になりましたが、今回、危機に瀕しても80年代のようなジャパン・バッシングが起こらなかったのは、日本メーカーが既に米国での販売の半分以上を米国で製造しているという事実があります。それに加えて、一部の議員や国民に「あのときも支援をしたじゃないか。日本からの輸出を抑えたし、日本メーカーの現地生産も促した。その間に君たちはいったい何をしていたのだ」という失望の思いがあるからでしょう。結局、80年代に米国メーカーやその関連団体が行ったルールの変更は、30年後の今日、彼らを勝者にすることはできませんでした


p150.双葉山の引退挨拶は映像が残っており、今でも見ることが可能ですが、彼はその中でわざわざ「私は15尺土俵の上で……」と述べており、やはり引退時のコメントは本心なのだろうと思います


p150.ルールなどの制約は、成長の糧になりうるものなのです。さらに言えば、制約のないところで、人間や企業が成長するのは難しいことなのかもしれません


p156.米国のオクラホマ州にこんなことわざがあるそうです。「テーブルに着かないなら、君の名はメニューに載るしかない(If you are not at the table, you are on the menu.)」


p161.「個人の意見を鮮明にするより、スタッフのアイデアを取捨選択し、その責任をとることで昇進してきた日本の経営者に、個人勝負のダボス会議に出ろというのは難しくないか」との問いかけをしてみました。さすがに竹中氏は、実に見事な答えを返してくれました。まず、日本のビジネス界には、いわゆる「プロの経営者(CEO)」は少ないだろうから、その点で言えば、会議との相性は悪いということです。確かに、ダボス会議はプロの経営者の意見交換の場です。プロというからには、自分の考えが明確な人ばかり。創業者タイプならともかく、自分の考えを鮮明にしない傾向のある日本の経営者タイプが、強烈な主張を持った相手と討議をするのは難しいと思います。そこで竹中氏が出した救いの手は、プロのCEOとは、一種の「経営技術者」であり、日本の経営者のように自分の所属する企業、または企業が属する業界には精通してはいないという点でした


p173.日本のメーカーが航空機を開発したら、必ず「これで本当に安全だろうか?」と疑問に思うエンジニアがいるはずです(米国にもいるとは思いますが)。実際に、ビジネスジェットでは3点式のシートベルトを採用できる機種もあり、さらに、前席にエアバッグを装備した旅客機も登場してきました


p178.本来、ルールというのは個社だけでなく、企業が属する業界、さらには全産業界、さらには社会全体に影響を与えるものです。大企業ならなおさらでしょう。したがって、どんなルールも、個人、個社、一国だけでなく、全体にプラスの貢献をするように作られなくてなりません


p196.メールを書く、上司に報告をする、洗濯をする、買い物にいく。私たちは、とかく、体を動かして、結果がすぐ目に見える仕事を優先しがちです。企業であればそうやって短期的に目に見える結果を出す人が評価されがちです。しかし、じっと考えるだけの時間も作らなければ、本当の意味での進歩や改善はむずかしいと思います。昔、上司から「青木くん、そんなに忙しくしていたら、いい仕事なんかできないぞ!」と言われたことがありますが、自著を執筆しながら、その言葉の意味がよく理解できたような気がします




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