高橋秀実「やせれば美人」新潮文庫

公開日: : 最終更新日:2011/09/11 書評(書籍)



ダイエットについての動きがおもしろく書かれている。特に男性である夫から見た女性である妻のダイエット。皮肉を含め、考えさせられるエピソードが多い



大変におもしろいと誰かが勧めていたような気がする。そんなことでもなければ、手に取らなかっただろう。確かにおもしろい。笑う。が、期待したほどでもない





p36.「しあわせ」とはもともと「仕合わせ」。つまり勝ち取るものではなく、運命のめぐり合わせを意味している



p42.失敗から学ぶ、という姿勢も大切ではありませんか? 「そういう、ひねった考え方を喜ぶのは、男だけです」――………。別に、ひねっているわけではない。体質の差こそあれ、ダイエット法はもっと淘汰されてもよいのではないかと思っただけである。「つまり」と彼女はつけ加える。「女性は自分を否定されるのが、最も嫌いなのです」



p45.ダイエット法はどこかから突然降ってくるものらしい。言うなれば「恵みの雨」のようなものだ



p46.彼女がとぼけるので、私は実例を挙げて詰め寄った。「なるほど」――でしょ? 「偶然の出会いがいいんです」「いい」「悪い」を訊いているのではない。真偽をたずねているのだ。「つまりロマンスです。白馬に乗った王子様と一緒です」それが悪いか、という口調で彼女は言い切った。――ダイエットとはロマンスなんですか? 私が確認しようとすると、彼女は「わかっていない」という顔をした。「女性誌、ちゃんと読まれたことあります?」――はあ。「ファッションやメイクの紹介ばっかりで、男の人はカタログみたいだとか思うんでしょうね」――はい、思います。私は正直に答えた。「くだらないと思ってるんでしょ」――決してそういうわけでは……。「女性たちはこれらを読んで疑似体験するんです。自分もこうなれるんじゃないかしらとか、自分がこうなったらどうかしらとか。要するに”夢”を見るんです」――ダイエットもそうなんですか? 「そうです。自分がダイエットに成功したら、こうなるんじゃないかと夢見るんです。ダイエット記事とはそのためにあるんです」現実はどうかなどと問うのは無粋らしい



p51.ダイエット。意味がバラバラである。何だかさっぱりわからないが、よくよく考えるとこれらの意味にはひとつの共通点がある。それは、「きちんと」ということ



p58.私は突如として、妻が「やってみたい」と言っていたダイエット法を思い出した。朝、目が覚めたら、やせてたというやつ」虫がよすぎるように見えて、これは心構えとしては経験なのだった。きちんとした計画を立てて、きちんとした生活を送る。そしてある日、気がついたらやせていた――妻の願いがわかったような気がして、私は思わず十字を切った



p67.つまり、160は女性にとって分かれ道。160以上と160未満で大きく二分されるということだった。160以上に分類されると、「スラリとした」「きれい」の資格を得る。そして未満だと「かわいい」という価値観の世界に入るらしい。言われてみれば、雑誌グラビアなどで女性タレントのプロフィールを見ても、160ピッタリという人は少ない。以上か未満か。はっきりとした棲み分けができており、妻は未満の世界で勝負しているのだ。未満で肥満だから、話が複雑になるのである



p83.カロリーとは何か? 食品のカロリーは、「爆発熱量計」と呼ばれる装置の中に食品を入れて完全燃焼させ、その際に発生する熱量を測定する。食品がもっている「エネルギー」ということである。人間が食品を食べると、原理的には燃焼と同様の反応(酸化)が行われるので、取り入れるエネルギー量として考えられているのだ。そのエネルギー量を、人間は「心臓、肺や筋肉の活動などに必要な運動エネルギー、体温保持に必要な熱エネルギー、神経での刺激の伝達というような電気エネルギー、体成分の合成のための化学エネルギーなどとして利用する」のである。ちなみに運動不足になると、その分は脂肪という化学エネルギーに変化するというわけだ



p125.「生活や感情はなかなか自分ではコントロールできません。でも体重だけは確実にコントロールできるんです。意に反して太るということはないんです。うれしいじゃないですか」ダイエットとは、自分をコントロールする喜びなのである。彼女は村上春樹ファンだった。彼の小説に登場する人々はみんな自分をコントロールできているらしく、その世界に浸るとダイエット感覚が自然に身についていくらしい



p140.走ることは「体のチェック」にもなるらしい。モデルを目指す人たちの専門学校である東京メディアアカデミーのモデル専攻科でも、次のようにランニングを勧めている。「ランニングをすすめる理由は、少しでも太ると重くて気持ちよく走れませんし、自分の身体のどこに余分な脂肪(贅肉)が付いているのか、走っているともっとも分かりやすいからです。その分を意識してランニングを行うことで、余分な脂肪を落とすことができるのです



p148.――じゃあ、どう暗示すればいいんですか?「”細い”です」なるほど、「細い」は繊細さにもつながり、「細腕繁盛記」のように時として力強くもある。そういえば、ある日妻に「足首は細いよね」と言った時、彼女は「でしょ、足首はもともと細いのよ」と自信満々に答えていた。「やせる」のは人為的だが、「細い」は先天的、つまりナチュラル・ボーン・ビューティーにも通じるのである





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  1. ky より:

    「ロマンス」「夢」いいねえ

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