大山泰弘「働く幸せ」WAVE出版

公開日: : 最終更新日:2011/09/13 書評(書籍)



会社経営の理想。自分の信じた道を進んで、その夢を実現する。ヤマト運輸の後の小倉昌男のよう。政府など時の権力と衝突するところも似ている



人のレベル感を意識せずに、知的障害者に仕事をさせる。それが外国の動向に引けをとらないというところが天晴れ。あんまりストレスってないだろうな



入り口のところ、本人はやる気がないのに、現場の人が前向きというところが泣けてくる。これを断る理由がないよな、という気がする





p8.そして、ふと目を門のほうに移すと、「1人で行かせる」と言ったはずのお母さんが、そのようすを電柱の陰からそっと見守っていらっしゃることがあります。その切なる思いに、何度心を新たにさせられたでしょう



p26.私も「社会」の例外ではありませんでした。「就職を」と懇願する先生に向かって、「精神のおかしな人を雇ってくれなんて、とんでもないですよ」という言葉を発したのは、何を隠そうこの私自身なのです



p28.2週間の実習も今日が最後という日、1人の社員が私のところにやってきました。シール貼りの作業を受け持つチームの代表格の女性です。そして、「こんなに一所懸命にやってくれるんだから、1人か2人ならいいんじゃないんですか。私たちがめんどうをみますから、あの子たちを雇ってあげてください」と言います。これは、現場の人たちみんなの意見だと



p72.その頃、美唄市では、地元の知的障害者が就職できる場づくりに取り組んでいらっしゃって、全国の知的障害者を雇用している企業に誘致を働きかけていたのです。わが社を訪ねてみえたのは、市役所の福祉関係の職員さんと、社会福祉法人美唄学園の責任者のお2人。とても熱心な方々でした。企業の少ない美唄で知的障害者の雇用を守ることの難しさを切々と訴えられる姿は、あの青島養護学校の先生とだぶりました。しかも、その後、市長さんまでもがわざわざ挨拶にみえたのです



p76.アビリティーズ社のような先進的企業を有するアメリカですら、知的障害者雇用は行われていない。ということは、日本理化学工業は世界の最先端をいく企業ということではないか。私は発奮しました。「よし、日本で、世界のモデルとなるような知的障害者の工場をつくってやろう。それも、純然たる民間企業として成立させてやるんだ」こんな夢を抱いたのです



p100.気を取り直して、今度は、大田区とは川を隔ててお隣の川崎市を訪ねました。すると、思いがけず、温かく迎え入れてくれました。ありがたいことに、伊藤三郎市長(当時)じきじきに、「大山さん、川崎市は障害者施設の延長線上に雇用施設をつくるのではなく、みなさんのような企業に障害者を雇用していただくのがいちばんよいと考えています。ぜひ、サポートしたい。土地はなんとしても探しますよ」と声をかけてくださいました



p130.私たちは、待つことに意味があると考えています。たとえば、毎週のように行動障害を起こしていた社員が、2週間に1回、3週間に1回というふうに、少しずつでも変化していくようであれば、本人が成長したととらえるのです。ですから、一度や二度、「約束」を破ったからといってあきらめるようなことはありません。そして、待ち続けることで、確実に彼らは成長していくのです



p131.こんなときに、家に帰す判断をするのは私の役目なのです。「周りに迷惑をかけたら、すぐに帰ってもらう約束だったね。覚えているだろう?」私はやむを得ず、彼に帰宅を促しました。そして、Kさんが帰り支度をしている間に、親御さんに「これから帰します」と電話を入れます



p134.私は、彼の内面の葛藤を想像しました。自分ではどうにもならない衝動と、働きたいという思い。彼はその両者の間で必死に戦っていたはずです。周りの社員も、その変化に気づいていたらしく、実に辛抱強く待ってくれました。こんな状態は、5~6年ほども続いたでしょうか。Kさんは次第に落ち着いて仕事に取り組めるようになっていきました。ついには、鎮静剤も不要になりました。「働きたい」という思いが勝って、彼に「忍耐力」がついていったのでしょう。自分の抱えているハンディキャップを乗り越えたのです。私は、目を見張るような思いでした。今も、Kさんは働き続けています。あんなに暴れて、何十回も帰された人とは思えないくらい、表情はとてもなごやかです。それどころか、新入社員のめんどうをとても親切に見てあげるほどに成長しました



p144.実は、一度、特殊学級で教えた経験のある人を採用したことがあります。いわゆる”プロ”がいたほうが、知的障害者とのコミュニケーションがよりよくなるのではないかと考えたのです。しかし、結論としては失敗でした。というのは、その方にはたいへん申し訳ないのですが、専門家ゆえに、なまじ「知的障害者はこうである」という”思い込み”があったからです



p163.私には理解ができませんでした。ただ純粋に、障害者雇用を広げるためにという一念で考え続けてきた末のアイデアです。「労働省を敵に回す」などということは考えもしないことでした。ただ、私の提案には、何か労働省の”省益”を害するものがあったのでしょう。それが、具体的に何なのかはよくわかりません



p186.みなさんは、商売繁盛の神様であるえびす様が、足の立たない障害者だったことをご存じでしょうか? 神話事典によると、えびす様は「蛭子」という、いまでいう小児麻痺のような病気だったようです。生まれてすぐ笹舟に乗せて流されてしまい、潮の流れでめぐりめぐってたどり着いたのが瀬戸内海。笹舟を見つけた漁師が、かわいい赤ちゃんといって家に連れて帰り、自分で育てることにしました。そして、町の人たちもみんな大事にして、神様と祀ったのだといいます。祀った理由がおもしろい。足がないことをもって、「お足が出ない」(お金が出ていかない)といってありがたく祀ってきたのです。ユーモアとやさしさを感じさせる、優れた「共生の思想」だと思います。このように、日本には素晴らしい文化が残されています





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