冨山和彦「挫折力」PHPビジネス新書

公開日: : 最終更新日:2011/09/10 書評(書籍)

なんかの書評で勧められていたので読んでみたもの

携帯電話のころの話、幕末維新の志士の話が多いのが気になる。最近のことをもっと知りたいね、経営共創基盤とかJALとかをさ。冨山和彦「会社は頭から腐る」ダイヤモンド社のほうが面白かった

差別化ができないただの優等生をMBAは採ってくれず、どこまで先方に覚えてもらい必要とされるかに工夫を凝らさなければいけない。小泉政権の郵政民営化が、現在の思いつきによる増税や原発の議論とはまったく違う。そんなこんなの著者の言っていることは基本的にすべて同じ思いを持つ

ただ、全体的に雑な作りかな。内容にも村があり、後ろの半分からメモすべきところがキレイに見つからなかったりして

p25.士農工商の階級制度と幕藩封建体制の制度疲労を巧みにごまかしながら、日本には300年近い平和が続くことになる。ところが幕末に外圧が加わることで社会的矛盾が一気に噴出し、これが攘夷運動から討幕運動へとつながっていったのだ

p27.ご存知のとおり、革命の主人公たちは皆、順風満帆なままに革命を成功させたわけではない。彼らの多くは、幕府や他藩との抗争や自藩の内紛に翻弄され、何度も失脚し、あるいは殺されそうになっている。長州藩は第一次長州征伐において幕府に敗れ、重臣たちが切腹させられるなど国存亡の危機に陥っている。維新の元勲である桂小五郎が暗殺を恐れ、あちこちに身を隠して逃げまわったのは有名な話だ。また、島津斉彬の下で活躍していた西郷隆盛は、斉彬の死後、藩から疎んじられ島流しの憂き目にあう。そこで将来に絶望し自殺をはかるが、一緒に自殺をはかった僧月照だけが死に、西郷は九死に一生を得ている。すさまじいまでの挫折体験である。「維新の三傑」のもう1人である大久保利通は、薩摩藩の中でも下級武士の出であった。彼も若い時代に藩主の逆鱗に触れて謹慎させられている

p51.答えが出題者の意図に沿わなければバツになる。つまり、自分の持っている発想やエゴを殺さないと、出題者の求める正解にたどり着けないのだ

p70.考えてみてほしい。実は上司や師匠に食ってかかるのは、そもそも気楽な行為ともいえるのだ。なぜなら、もともと力関係で相手のほうが上なのだから、負けて当然である。仮にこちらが優勢で相手を傷つけることになっても、「それも上司の仕事」と思えば、良心の呵責に苦しむ必要もない。むしろこうした場合は、上の人間のほうが大変だ

p74.試験管は、何千通ものエッセイを読まされるのだ。受験生の大半は学歴も職歴も一定以上のエリートだ。誰でも書けそうな凡庸な内容しか書いていなければ、すぐに見切られ、落とされる。試験管にアピールできる内容にしなくてはならないのだが、日本的な教育制度の中で育った優等生は、無難なことしか書けない。皆が似たりよったりの優等生人生しか送っていないから、そこに差が生まれないし、面白くもない。人生に面白みがないから、人を面白がらせたり、ハッとさせたりする文章が書けないのだ。それが多くの不合格者をつくっているように、私には思えてならない

p84.世の中、大金持ちや社会的な成功者で、家族そろって幸福な人が珍しいのも事実。大体が家庭崩壊か、家督や財産の相続をめぐって親族が骨肉の争いを始める。大金持ちの家族で兄弟が配偶者を含めて仲がいいケースはきわめて稀だ。仕事柄、本当にいろいろな金持ち一族、あるいは仕事で成功して金持ちになった連中をたくさん間近で見てきたが、本当にそうである。金持ちになることよりも、金持ちになってなおかつ幸福になるほうが難しいと思えるくらいだ

p119.用語一つとっても、業種によって解釈はまちまちである。たとえば「長期」というと、鉄鋼メーカーの人は20年、30年単位を考える。一方、商社の人、市況商品の貿易にかかわってきた人などは、10年でもはるか先のことのように感じ、彼らの「短期」は「今日」を意味する。同じ日本人とは思えないほど、頭の中身が違うのだ。当然、話は噛み合わない。一人ひとりを見ても、すでに定年間近の人もいれば、入社まもない若者もいる。大会社からの出向もいれば、派遣で来た女性もいる。個々の抱える背景もキャリアも能力も、まったく異なるのだ。こうした個々の特性を知らなければ、組織を動かすことはできない

p134.日本の組織の行動様式はシーソーに似ている。集団の調和を重視し、空気の支配の影響下にある日本人を中心とする組織は、一定以上の人数が宗旨替えを明らかにすると、あとは付和雷同的に同調する場合が少なくない。尊皇攘夷から勤王開国へ、軍国日本から民主日本へと、良くも悪くも、多数派が雪崩を打つように宗旨替えして、シーソーが反対向きにパタンと倒れてしまう。そして最初の何人かから始まる「宗旨替え」について、一回の劇的な演説や説明で一気に考えが変わるということも日本人の場合、めったにない。長期にわたり、念仏のように何度も何度も囁かれ、訴えられているうちに、「情」と「理」が絡まりあいながら腹に落ちていくというプロセスを踏む場合が多い。小泉さんの郵政民営化も、彼が初当選して以来、数十年にわたり一貫して唱え続けた政策である

p139.小泉さんが首相時代によく使った「抵抗勢力」は便利な言葉だ。誰と特定していないので、個人を批判したことにならない。戦況不利と見て、「君子豹変」すれば、自分は抵抗勢力ではなくなれる逃げ道をつくってあげる効果もある。人ではなく「ある勢力」を問題視することで、抵抗勢力をまとまりにくくさせるのだ。こうして抵抗勢力を分断しておいたうえで、そのトップを「懐柔しておく」というのも手だ。この点でも、何度か例にあげている明治政府のやり方はうまかった。武士階級を解体するにあたって、下級武士たちの不満を無視する一方で、大名たちを華族という立場に持ち上げるという分断と懐柔を行った。これにより家臣団をトップから切り離し、彼らを解体していったのだ

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