中崎タツヤ「もたない男」飛鳥新社
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書評(書籍)
もう、大昔になるが、当時、出入りしていたスペースに置かれていた、誰かの読み終えたビッグコミックスピリッツを読んでいた。「伝染るんです。」とかの頃。いちばん好きだったのが「じみへん」
しかし、この本を読んでしまうと、違う。決して「じみへん」を読むだけで思っていた作者のイメージとは違う。すごくまじめな、確かに神経質そうではあるが、ゆるい、というよりは、むしろその逆の感触。著者のありのままの考えが吐露されているのを見るのが、実は少し怖かったりした
これでいて、ご結婚されているということで、奥様とどのように折り合っているのかというところが、読み進めていくうちに気になってきた。中盤にその辺の言及もされているのが、溜飲が下がる。やっぱり、すごく気を遣っている人なんだな
特に、尊敬している先生に対して告白をしてしまった、後味の悪い思いをしたとか、なぜか共感が半端ない。自省してみると、私も、物理的な周辺の片付けは苦手だが、人間関係に関しての「もたない」は負けてないよな。同期会とか、職場の飲み会にも出ないし、年賀状も出さないし。そういう意味で、誤解しているかもしれないけど、なんか自分のことのように感じながら読んでしまった
p47.私は汁が好きなので、ラーメン屋でも麺抜きを頼みたいのですが、それも 失礼なような気がしていい出せないでいます
p70.ものを捨てることは、私にとって主義でも美学でもありません。無駄が嫌いなんです。スッキリしたいだけなんだと思います
p71.何でもかんでも捨ててしまう私を病気みたいに思っている人もいるようですが、病気にみられようがどうだろうが、自分自身としてはどうでもいい。好きなことをしているだけですから、他人の目はあんまり気にならないんです。人の目を気にしていると、ストレスがたまって自然に生きることができないんです
p77.考えごとをしているときには、周りの音がすごく気になります。騒音や他の人間の生活音は苦手です。ですから、ものがないのと同じように音もないほうが精神的に落ち着きます。しかし、厳密には無音状態は自然界には存在しません
p96.本棚に並べるとばらばらになってしまって、すごく気持ちが悪いんです。それで、カッターで本の上と下を切って、背丈を揃えていったことがあります。本棚に整然と並んだ判型の違う本をみたときは、本当に気持ちがよかった。苦労して大きさを揃えた本もいまは処分してしまいました
p106.日常生活がイヤになってくると、逃げ出したくなって旅に出る。結果として、旅が転機になったり、リセット効果をもつことがあると思います
p168.つい、挨拶したいと思ってしまった。私はその先生の漫画や絵が大好きで、その先生にも私にいい印象をもってもらいたいと思ってしまったんですね。「大ファンです」なんてつい、挨拶をしてしまった。そういう擦り寄るようなことが基本的にすごくイヤなのに、思わずやってしまったんです。正直、後味が悪かった。思いを伝えられたという気持ちもなくはなかったんですが、好きな漫画家の先生に媚びてしまった自分が許せず、自己嫌悪に陥りました
p169.私も、土地がほしいんです。田舎にだだっ広い土地をもち、牧草地にして牛を飼う
20111028224350
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