佐藤優「人たらしの流儀」PHP

公開日: : 最終更新日:2012/03/10 書評(書籍), 有罪判決, 佐藤優



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対談の形式をとっている。明示されてはいないが、相手は編集者の小峰隆生氏だ。対談をそのまま活字に起こしました、という安易なもの。内容も著者の過去の話で出たことばかり。軽く読み流す感じ。ただ、この人の博学ぶりにはいつも舌を巻く


婚活の分析のところは面白かった。テーマと無関係だ。しかし、どうしても言いたかったんだろう。文脈でも確か脱線というような扱いにしていたけど。中村うさぎ先生を読んでみようかなと思った




p2.福島第一原発事故に関連した東電幹部や原子力安全・保安院幹部の記者会見のテレビ中継を見て、うろたえ、情報を何度も訂正する姿を見て、多くの国民が「これで大丈夫だろうか」という不安を感じたと思う。あの人たちは、一流大学を卒業し、競争試験に勝ち抜いた日本の超エリートである。専門能力には長けているが、何か重要なものが足りない。胆力が足りないのである


p14.インテリジェンスの世界は、私の経験で言うと、3回、チャンスを与えられる。しかし、3回ともうまくいかなければ、「あの人はいい人なんだけどね」で終わる。そうしたら、インテリジェンスの世界でその後、相手にされない


p15.ずる過ぎると、皆から信用されなくなって逆に損をする。だから、インテリジェンスの理想的人間像は、「ずるさを隠すことのできる程度の知恵のある、ずるい奴」なんです


p16.生き残るための知恵は、インテリジェンスなので、ゴキブリにもあります。しかし、インテレクチャルは、人間にしかありません。それは教育で教える知識です。インテリジェンスは生き残りの知恵です


p21.裏の世界で生きるインテリジェンスの人たちには、プロの間では嘘をつかないという掟があります。これが意外と守られているのです。インテリジェンスの世界で重要なのは、内心では相手が嘘をつくかもしれないと思っているとしても、表面上は、相手に対して、嘘をついたら恐いよと、牽制していくわけ


p24.美しくない女性には「美人だ」と言わないで、「素敵なハンドバッグを持っているね」とか、モノを誉める。ホステスがよく言うのは、誉めるところがまったくない男が来たら、「いいネクタイね」とネクタイを誉めろと。大切なのは嘘をつかないことです


p37.本当に重要な話を相手が思わず漏らしたときは、絶対に聞き直してはダメです


p41.人間は誰しも、自分の考えていることを他人に聞いてもらいたい願望がある。真面目な人間であればあるほど、その願望は強くなります。インテリジェンスの要諦は、相手の願望・欲望にどうやって付け入るかにあります。だから、人の話を聞くという行為は、大切なインテリジェンスのひとつです


p64.こんな社会は、おかしい。だから、労働価値説の基本に戻ることが大切です。一人の人間が、働いたら、その労働に見合った報酬をわたす。これです


p73.翻訳は冒頭と最後のほうに凄く力を入れてチェックしているけど、中抜き、中だるみになっているのがときどきあります。さらに、いい加減な監修者・監訳者は、序章と最終章しか見ないで、あとは大丈夫だろうというスタンスでやっていることが多いですから


p84.もし、語学にトライするのでしたら、基本的なマニュアルとしては、白水社の語学書『ニューエクスプレス』シリーズが、完璧にできています


p87.ヘラルド・トリビューン紙は、東京でつくっているのにもかかわらず、扱っているニュースが違うのです。たとえば、日本中で、あざらしのタマちゃんを扱っているときに、ヘラルド・トリビューン紙にはタマちゃんの記事はほとんど出てきません。ニュース・ソースの選択が国際基準だからです


p107.婚活は、新自由主義の経済合理性の発想を結婚にまで持ち込もうとしているのです。結局、すべてを数値化してしまうようになります。そして、婚活で言うなら、できるだけ点数の高い男をつかまえるということになります。婚活は、結婚のキャバクラ化と言ってもいいのです


p120.婚活女子を理解するには、中村うさぎ先生を読めばいいと思います。『セックス放浪記』とか、『女という病』、また、少し前の『壊れたおねえさんは、好きですか?』などお薦めです


p121.その女性たちはお金がないから婚活合コンに行きます。お金があれば、ホストクラブに行っています。婚活は自己確認の場です。自分自身で自分の価値を量れない。これは、資本主義の特徴なのです。『資本論』を読めばわかりますが、交換過程で、初めて、値段がつくのですから。一極における富の集積は、もう一極で、貧困の集積となります


p128.オウム返しの技です。この方法を一番うまく使った手本は、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』です。「大審問官」のところで、アリョーシャが、イワンと話をする。アリョーシャはイワンの話すことと同じことを、オウム返しに言っています。それ以外、実は何もしていない。しかし、あれだけの長編小説の中で一番、重要な部分を成しています。優れた小説家ドストエフスキーから、オウム返しの技を学ぶことは、反復の学習になるでしょう


p133.真理というのは、必ず、どっかに2つ、焦点があるものです。それは矛盾していない。楕円を描けるようになれば、これはもう矛盾していないんですよ


p138.もうマルクスは完全にブルジョアです。エンゲルスに宛てた別の手紙で「俺にプロレタリアートのような生活をしろというのか」と文句をつけたこともあります。それで、マルクスは資本家の立場から見て、この世の中はよくないといったのです。エンゲルスは、大学に進学したいんだけど、親が厳しくて、「大学に進学したら資本家になれない」と言われて、マンチェスターで工場を継がされます。そうしたら、儲かって儲かってしようがない。労働者にきちんと給料は出している。さらに、金はある。「何で、こんなに儲かるのか?」と疑問を抱いて、研究を始めたのです。そして、ついにわかるのです。「これは労働者を搾取しているからだ」と。すべての価値は、労働者から出ていることに気がついたのです。「これはよくない世の中だ。これは共産主義にしないといけない。しかし、共産主義にするには、お金が必要だ」と、労働者から搾取を続けて、そのお金をマルクスに貢いでいました。そして、革命運動を行ったのです。日々の生活に追われている労働者は、革命を考える余裕もわかるはずもないだろう、というのがマルクスとエンゲルスの立場です


p146.諜報活動で、情報を得ようとした女性とトラブルになった時です。たとえば、相手を妊娠させてしまったという状況です。そんなとき、お金で解決するとしたら、どれくらいの金額で解決しますか? およそ、その女性の年収の2倍です。2年分の給与です。年収が250万円のOLならば、500万円です


p159.プロトコールに関する本を一度読めばいいと思います。日本語に訳すと儀典です。外務省儀典官室に長く勤めていた寺西千代子さんが書いた『国際ビジネスのためのプロトコール』。図解も入っていてわかりやすいですし、お薦めです


p162.相手に与える、怖さ。怖さがないといけません。もし、相手から無礼なことをされたら、大暴れしないといけません。毎回やるのは変人ですが、20回に1回ぐらいなら大丈夫でしょう。「舐めてもらっては困りますよ」という意志を、態度で示すということも人間関係の構築において、時には必要なんです


p189.酒と女は、肉体的な限界があるので、欲望にも限界があります。ところがお金には限界効用が逓減しないという怖い特性があります。だから、その金額が恐ろしいほど、跳ね上がる




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