小池良次「クラウドの未来」講談社現代新書

公開日: : 書評(書籍)



20120228223955


近頃、amazon cloud playerを使い始めた。結構、普通に聞けたりするのが驚きで、よく聴くアルバムをアップロードしてみたり、購入分の容量がカウントされない最低の有料プランに加入しようという勢いになってる


そのほかクラウドらしきサービスとしては、Dropbox、SugarSync、iCloud、Box、Evernote、Catch、Read It Laterとか、数え上げればきりがない。全部無料プランだけどな


そういうのを使うときに、裏でこんなことが起きているのか、と首肯すること多かった本


日本の規制の観点から、データを置くためのクラウドのサーバ所在地が日本でないといけない、このため、セールスフォースのサーバが日本に置かれるようになるという話を聞いたことがあった。それほど、米国にあるサーバは、令状なしに当局が内容を取り出せるというのだ。しかし、本書で書かれているとおりに3倍ものコストが掛かるのであれば、これを選択する利用者はそのコストを甘受しなければならない


最近、急にビッグ・データという言葉を見かけるようになった。Google翻訳の革新的なアプローチとか、フェイスブックの友達のsuggestionもビッグ・データのお陰というのが膝を打つ。Facebookで昔、試しに作ったアカウントにときどき友達がどうたらなんたらというメールが来て、確かに近い知り合いだったりするのは驚く。そもそもFacebookの意味というか、良さがよく分からなくてサッパリなんだけどね




p40.こうした巨大なデータを取り扱えるようになると、いろいろなサービスが可能になります。たとえば、グーグルの翻訳サービスはビッグ・データによって運営されています。従来の自動翻訳といえば、単語を仕分けし、文法的な解釈を加えながら、ターゲットとする言語構文に変換していました。しかし、グーグル翻訳では非常に大量の単語を比較することで、そのまま対訳を行います。そこには単語仕分けも文法解釈もありません。これは従来の機械翻訳から見ると笑い話にしか聞こえないほど、革新的なアプローチです。もちろん、翻訳精度をあげるためには、構文解釈などを入れるほうが良いでしょう。しかし、グーグルは無料で大量の人に簡易翻訳を提供することを目指しており、7割程度意味がわかれば十分と考えています。逆に従来のやり方では、何千万、何億人の利用者に対し、翻訳を瞬時に提供することは不可能でした。だからこそ、ビッグ・データによる簡易翻訳を採用しているのです


p41.グーグル・サーチでは入力した検索用語に類似したものを「こちらではありませんか」と尋ねてきます。これもビッグ・データを利用しています。フェイスブックは、大量に飛び交うコメントから類似性を見つけて「お友だちではありませんか」と尋ねてきます。これもビッグ・データ技術によります


p43.ソーシャル・ネットワーク・サービスに飛び交う情報量はたった4日間分だけで、人類が書籍や写真などに蓄積してきた情報の送料と同じと言われ、人類の経験したことがない新領域に入っています


p43.ビッグ・データの世界では、それぞれのチップで複数のアプリケーションを同時に走らせる必要はありません。逆に数万台のサーバーに載ったひとつのアプリケーションで、多数の計算や大量のアクセスを処理する必要があります。こうした環境では、既存の汎用チップは「最適とは言えないのではないか」という疑問が生まれ、反対にシンプルで発熱が小さく、消費電力が少ないチップ、たとえば安い携帯電話などに使われるチップが良いのではないかといった議論が進んでいます


p46.パソコンでは最近、ブラウザーでさまざまなアプリケーションを動かしています。利用者には見えませんが、そこではブラウザーの中にある仮想マシーンと呼ばれるソフトウェアをOSにかぶせています。そのため、アプリケーションは仮想マシーンが同じなら違うOS上でも動きます。つまりOSに依存しない動作環境です。こうしたタイプのアプリケーションをウェブ・アプリケーションとか、ウェブ・サービスと呼びます。おかげで、ブラウザーが動けば、OSがどんなものであれ関係なくアプリケーションを使えます


p47.現在のモバイル・ディバイスは1980年代から90年代初めのパソコン・モデルと同じで、ホスティングの世界から脱皮していません。ブラウザーに依存しないスマートフォンは、残念ながらクラウド・ディバイスとは言い難いでしょう


p49.実は、iモードを筆頭に、クラウド・ディバイスに向かって進化を始めていた携帯電話を過去に引き戻したのが、アップルのiPhoneであり、故スティーブ・ジョブズ元会長にほかなりません。ジョブズ元会長が、それを承知の上でスマートフォンを過去に引き戻したとは思えません。同氏は、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長と同様、根っからのパソコン世代であり、インターネットやウェブ・サービスについてのビジョンは苦手だったのでしょう。だからこそ、生涯最高のパソコン、つまりポケットサイズのパソコンを作ったわけです。それがiPhoneであり、その出来映えの良さは、時代を逆行させるほどだった――そう私には思えるのです。たぶん、アップルが携帯電話事業に参入したおかげで、クラウド・ディバイスの進化は「5年以上遅れた」と私は考えています


p75.このウィンドウズ独占は、独占の中でも自然独占と呼ばれるタイプです。過去、鉄道や石油、電話などでは、競合他社の買収や合併によって独占企業が誕生しました。このような意図的な独占経営体は、分割などによって独占を排除することができます。一方、ウィンドウズは便利なために利用ユーザーが増えて、自然に市場を独占しました。この場合、旧来の分割や解体といった排除手段が使えません。自然独占では、新技術による世代交代が進まない限り、独占が続く傾向が強いのです


p80.かつてマイクロソフトがウィンドウズ王国を打ち立てたように、アマゾンはプライベート・クラウドでディファクト・スタンダードを狙っています。これから数年は、アマゾン王国が出現するかどうかの重要な時期となるわけです


p120.現状は「電波=特定事業者への免許交付」という昔ながらのルールに当てはめて、ホワイトスペースを地域放送に割り当てるのは、困ったことです。正直なところ、日本版ホワイトスペースで狙っている地域放送プロジェクトの多くは、インターネット/ブロードバンド・サービスで同じことができます


p121.ホワイトスペースの問題は根が深く、電波行政において無免許サービスを拡大することは、政府・行政機関の権益縮小に繋がります。つまり、省庁の影響力が少なくなり、公務員の雇用縮小にも繋がりかねません。この「免許交付=権益の維持」という側面は、米国政府においても、日本政府においても大問題です。にもかかわらず、米国は放送・通信サービスのブロードバンド化に正面から立ち向かい、無免許周波数の開放に向かっているように見えます。一方、日本はホワイトスペースも既得権益の枠にはめ、「電波=特定事業者への免許交付」を進めています。この問題に正面から立ち向かう姿勢が見えないのは、実に残念です


p214.日本はデータの海外流出に対して事実上野放し状態にあります。一方、一部の欧州諸国では、データの海外保管を禁止する措置に出ており、米連邦政府もガバメント・クラウドでは、データの海外流出を認めていません。このようにクラウドは「国境を越えてサービスを利用することが当たり前」の状況を作り出す一方、既存の情報処理関連ルールや規制が国際越境に対応できない矛盾した状況にあります


p217.日本はインターネット・コミュニティーにおいて重要な位置を占めています。インターネット黎明期から、MIME規格(電子メールのタイトルで他言語を使えるようにする規格)やIPv6の開発整備などで重要な役割を担ってきました。現在も、上位DNS(ドメイン・ネーム・サーバー)の運営管理を行っています


p219.日本にとって、クラウド・データ・センターの誘致は難題です。まず、日本の高額な電気料金と高い不動産コストが大きな障害となります。厳しい建築基準と高い人件費も日本におけるデータ・センター運営を難しくしています。加えて、法人税が高いこともデメリットです。米国では「日本にデータ・センターを作れば、米国の3倍コストが掛かる」と敬遠されています。最近、アマゾン・ウェブ・サービシーズやセールスフォースが日本にデータ・センターを開設しましたが、コストが高いため、その規模は非常に限定的なものとなっています。一方、アジアでは、シンガポールや香港などが大規模データ・センターの誘致に熱心です。法人税割引などの特別優遇を行い、積極的に米国企業のデータ・センターを引き入れています




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