八代尚宏「新自由主義の復権-日本経済はなぜ停滞しているのか-」中公新書

公開日: : 書評(書籍)



20120310184644


最近iTunes Uで法学の学際をテーマとした一連の講義を聴いた。その中でもっとも楽しかったのが著者の担当する法と経済学であった。そこでのスピーチと、本書の内容はかなり被る。読みながらも氏の講義のなかの「市場は失敗するが政府はもっと失敗する」「首都高速道路が混雑すると入口を閉じてしまうのは乱暴で経済的でないやり方」「厚生労働省が行うべき福祉としての住居政策を国土交通省が行っている。しかも大家としての能力のなさは実証されている。住居については補助金をい出せばいいのであって、政府/国家が不動産を所有する必要はない」(いずれもうろ覚えだけど)などの言葉を思い出している。やはり聴くと時間がかなり必要ではあるが理解と記憶が比較的容易であり、読書は時間的に効果的ではあるが、真意を理解しそこねるところがあるかもしれないと思った


東日本大震災から1年が経とうとし、マスコミでも特集を組んでいたりする。直接の被害の対策だけでなく、本書でも触れられているような、計画停電の反省をしっかりやってほしいと思う。恣意的な計画停電で電気が必要な在宅患者の命を危険にさらすことになったことを思うだけで強い非難の可能性を感じる


公務員や国会議員の削減ということが最近いわれるが、これもおかしいのではないかと思う。本書でも公務員の少なさは好ましくないとしている。国会議員についても、ロクな立法ができない現状は国会議員を多くして対応するということもあるのではないか。国会議員が1人行政に問題提起するだけで、それが与野党にかかわらず官僚にとっては大きな牽制を感じるというし


特に気に入ったのは通商産業省による日本の自動車メーカーの統合の動きとその失敗のケース。それを受けて競争のなかで自動車産業が世界有数に育ったとの評価がある。戦後の経済発展について政府の貢献があるといわれがちな気がしてたので、それへの反論となる一事例。「賢人政治」などできない


現在のヤマト運輸の実質的な創業者の小倉昌男のことも引用されているのは、この本がよい本だということだ


小倉昌男「小倉昌男経営学」日経BP社 | hiog




i.2011年3月11日に発生した東日本大震災も、いっそう「大きな政府」が必要だという論拠に使われがちである。しかし、その直後の電力不足に対応するため、東京電力管内で行われた「計画停電」は、短期間ではあったが、恣意的な停電区域の設定など完了統制の悪夢を再現した。また、高速道路は、被災した東北地方への唯一の動脈線となったが、当初、その通行を官の車両に限定したことで、未完による生活必需物資の輸送が妨げられたという指摘もある。緊急時であっても、統制経済一色ではなく、市場を適切に活用する必要性が、改めて認識されたといえる


i.戦後の日本経済の発展を支えてきた、市場での自由競争を尊重する思想は、一部にいわれているような、欧米の思想の受け売りではない。織田信長や大坂商人をはじめとして、日本社会でも古くから存在する考え方である。また、第二次世界大戦前の日本の労働・資本市場は、欧米型の流動的なものであった。一方で、戦中・戦後に確立した日本的雇用慣行やメインバンク制度は、日本の伝統的な文化とは直接結びついてはいない


ii.そもそも、市場重視の思想とは、自由放任主義ではなく、政府の役割を否定するものでもない。市場だけに委ねると公害などの社会問題が生じるという「市場の失敗」は、経済学の初歩の教科書にも登場する当たり前の概念である。市場が効率的に機能するためには、健全な市場を守るための競争政策や、震災への対応も含めた社会保障など、政府の役割も重要である。問題なのは、政府による市場への過度の介入から生じる「政府の失敗」――とくに日本において、いたるところに見られる――である


p10.「はじめに」でも触れた「計画停電」のように、市場を活用せず、電力会社と政府が大きな役割を果たそうとしたことの弊害が目立った。計画停電は緊急的な処置だったとはいえ、国民生活に多くの混乱をもたらした。企業や個人の必要度の違いにかかわらず、お上の判断で特定地域の電力供給が一方的に打ち切られたことは、過去の「配給制度」の悪夢を思い起こさせる。また、計画停電に続き、真夏の電力需要ピーク時の対策として、企業の生産活動に不可欠な電力に厳しい使用制限を画一的に課した。その一方で、需要の3分の1を占める家庭には、「節電のお願い」だけという政策も、バランスを欠いている。企業の負担は、いずれ生産減少などを通じて家計に跳ね返ってくるメカニズムが理解されていない。貴重な電力を効率的に配分するためには、低所得者に配慮したうえで、企業・家計を問わず、自発的な節約を促すための料金引き上げという、価格メカニズムの活用が不可欠となるp15.事後的な規制には、対象となる事業者数が多いことから、専門的な知識を持った多くの公務員が必要となる。しばしば、日本の公務員数が人口当たりで欧米主要国より少ないことから、「日本は大きな政府ではない」といわれる。確かにフランスや英国などでは人口1000人当たりの公務員の数はそれぞれ96人と78人なのに対し、日本では42人である(野村総合研究所、2005年)。しかし、これは、日本では少数の公務員で対応可能な事前的規制を中心としているためであり、消費者利益を重視する新自由主義の立場からは、むしろ、より多くの公務員を使う事後的規制のほうが国民全体にとって望ましい


p47.住宅などの安全検査の手続きを、不良品の「摘発」を目的とした官の権力行政から、安全性を保証する民間の「検査サービス」に移行したこと自体が誤りだったのではない。検査サービスの受益者と負担者について、適切なインセンティブを欠く仕組みとしたことに、真の問題があった。集合住宅の建設の際、建設事業者に住宅保険への加入を義務づけ、その耐震性審査の費用を、建設事業者ではなく保険会社が負担する仕組みとする。そうなれば、検査会社がより厳格な審査を行うことが、(事故が生じて保険金を払いたくない)依頼主の利益に沿うことになる。これが新自由主義の論理であり、証券化商品の格付けについても同様に成り立つ対応策である


p58.ちなみに金融市場のルールは、スポーツの世界のルールと共通した面が多い。金融市場の監視人の役割は、スポーツの審判に相当する。同じ審判でも野球とサッカーとでは大きな違いがある。攻める側と守る側が整然と分かれている野球の審判は、ストライクとボール、アウトとセーフなど、事実行為の認定を機械的に行えばよい。これに対してサッカーの審判は、ボールがラインの外か内かの事実行為だけでなく、試合を効率的に行うために、より高度な判断を求められる。選手が相手の妨害をすればファウルになるが、その場合にも、結果的に、相手側に有利な場所にボールが転がれば、あえてその反則を見逃す、アドバンテージ・ルールがある。これは、選手の個々の行為についてではなく、全体として、「ルールに違反したことが有利にならない」という、より大局的な判断が重視されるからである


p64.平安時代末期の1180年に、時の政権を担っていた平家は、平清盛の強いリーダーシップで、京都から福原(現在の神戸市)への遷都を行った。長い歴史のある平安京を離れることに、天皇や公家、および平家一門が強く反対したにもかかわらず、それを押し切って果敢に実行されたものであった。この福原遷都には、公家に対する武家政権の確立を目指したとか、奈良や比叡山の寺院勢力からの圧力を回避するためとか、諸説がある。しかし、遷都の地として、あえて瀬戸内海に面した良港を選択したことは、当時、日本との貿易拡大を目指して瀬戸内海に現れた宗の船の影響も大きかったと考えられる


p67.市場を商人からリベートを取る手段としてしか考えていなかった多くの封建領主に比して、信長にとっての市場経済の重要性は明らかであった。多くの商人が信長の領地に集まることで市場での取引高が増えれば、消費税から得られる財政収入も増え、それを財源として軍事力をさらに増強し、領地を拡大できるという好循環が働いたと見られる。戦国時代は徹底した地方分権で、制度間競争の時代でもあり、優れたビジネスモデルを持つ領主が、政治的・軍事的にも優位に立てる状況であった


p75.米軍のバグダッド占領とともに、フセイン大統領以下、官僚や警察官に至るまで職場を放棄して逃走し、政府の機能がマヒしたイラクに比べて、敗戦後の日本政府の幹部は、戦犯とされるリスクにもかかわらず職場に踏みとどまり、日常の業務を淡々と続けた。また、日本では占領軍に対するテロ行為がまったくなく、むしろ異文化を積極的に受け入れた。その結果、米国は占領行政を短期間で終え、東アジア地域において、共産主義への防波堤となる民主主義の同盟国を得ることができた。しかし、現在から振り返れば、これがどこまで米国の占領行政の成功といえるか疑問である。当時の日本の官僚機構は占領軍当局に対して、今日の政治家に対するのと同様な「面従腹背」のスタンスであった。戦時中からの構想であった農地改革を占領軍の威光を借りて速やかに実現する一方、米国の指令に基づく財閥解体や独禁法強化は、戦後の主権回復とともに骨抜きにしてしまった。そもそも、イラクと日本の大きな違いは、日本はもともと戦前から民主主義の国だったことであり、軍国主義の陸海軍を米国に取り除いてもらったことで本来の姿に戻っただけといえる


p81.当時の通商産業省の意図に反し、ホンダやマツダなどの下位メーカーが抵抗して再編が進まず、自動車産業では10社体制が長らく維持された。結果は、国内市場での厳しい競争条件が維持されたことで、かえってその後の日本の自動車産業の発展に大きく寄与した。これは、寡占体制だった米国の自動車産業の長期的な衰退と好対照となっている


p83.(携帯電話、大店法)これ以外にも、「米国の生産者の利益を代表する米国政府の圧力によって、日本の新規事業者と消費者が利益を得る」という構図が繰り返されてきた。こうした米国政府の「貢献」について、当時の日本の国会を念頭に、「健全野党」という表現が用いられたことがあった。これは、自民党が万年与党だった当時、野党の社会党は観念論を振りかざすだけで本来の野党としての役割を果たしておらず、生産者保護一辺倒の与党自民党に対して、消費者利益を主張する米国政府こそが実質的な野党の役割を担っているという意味であった


p109.そもそも公務員でないタクシー運転手のあるべき所得を誰が決められるのだろうか。運輸業界では、タクシーに限らず「需要に見合った供給の制限」を政府が行うことが、長年の「常識」となっていた。これは官が利用者の需要を予測し、それにあわせて新規のタクシー台数を認可するという、社会主義経済そのものの論理である。タクシーへの需要は固定されたものではなく、その価格水準によって決まるという、市場経済の「常識」が完全に欠落している。官の規制があるところには、必ず業界の利権が生まれる。地域ごとに生産者が「適正」と考える利益を得られるようにタクシー台数が制限されれば、過去にあったように、タクシーのナンバー権の売買も公然と行われることになる。これは輸入許可を持つ生産者が、高い価格を支払う消費者の犠牲によって独占的な利益を得る「保護貿易」と同じ構図である


p114.小倉昌男(ヤマト運輸元会長)の『小倉昌男 経営学』(日経BP社、1999年)によれば、家庭を対象とした小口貨物のビジネスモデルを考えた時に、最大の障壁が、恣意的に運用されていた県単位のトラック輸送免許制であった。これは、過当競争になりがちなトラック業界における「弱肉強食」を防ぐための仕組みとされていた。法律に基づかない、地元の事業者の合意が前提という、旧運輸省の行政指導に対して、一業者が「国を相手に訴える」という前代未聞の闘いの末に、トラック輸送の全国ネットワークを可能とする規制緩和を勝ち取った。これに後続の事業者が追随し、活発な競争が生まれるとともに、それまで「殿様商売」であった郵便局の小包配達も、見違えるほどサービスが向上した。その結果、消費者が便利な宅配便を多用することでトラック輸送への需要が増え、従来の事業者の売上げも増えた。こうしたシュンペーター言うところの「社会的イノベーション」は、賢人政治や共同体からはとうてい生まれない


p134.地方交付税の仕組みでは、地方が努力して固有の税収を増やすと、その分だけ交付税を削減され、逆に税収が減れば、交付税が増加することになる。このため、県知事や市長にとっては、住民税を引き上げて批判されるよりも、交付税に依存するほうが選挙に有利となる。現に、2010年度では、交付税を受けていない都道府県は東京都だけであり、税収の多い24市町村とあわせても、人口全体の13%にすぎない


p140.日本型の特区のモデルとなるものは、米国やカナダの州政府であり。米国の50州は、連邦政府によって特別に規制されない限り、商法から家族法に至るまで自由に法律を制定できる。この結果、各州の間で絶え間ない「制度間競争」が繰り広げられており、ある州のよい制度が別の州に採用されて全国に広がるというプロセスが常に存在している。きわめて小さい規模ではあるが、こうした連邦政府のメリットを導入することが、特区の目的であっといえる


p143.構造改革特区法を国会に提出する前には、当時与党で会った自由民主党の事前審査を受ける必要があった。その際に、個々の規制改革への反対意見とともに、推進派からも「企業を誘致するには規制緩和だけでは不十分で、税の優遇や補助金をつけるべき」という批判があった。これは財政の優遇措置つき特区でなければ、政治家の出番がないという事情にもよる。それにもかかわらず、あえて特区から財政支援を排除したことは、財源の制約から限られた数の特区になることを防ぐとともに、国が特定の地域を振興するための手段ではなく、地域主体の規制改革の社会的実験を目的としたからであった。もっとも、民主党政権になってからは、当時の自民党と同じ批判が蒸し返され、補助金と一体的になった「総合特区」の構想が浮上している。このことは、「政治主導」の意味を考えるうえで興味深い


p163.年金所得への取得税には、会社員の給与所得控除に相当する「公的年金等控除」がある。この所得控除額は、最低でも120万円(65歳以上)と、給与所得控除(65万円)の倍近い大きさで優遇されている。しかし、給与所得控除のひとつの意味は「働くための経費」を控除するものとすれば、引退後の年金に、より大きな所得控除を認めることは、とくに高年金受給者について妥当ではない。現行の公的年金等控除を、年金受給額の増加とともに徐々に縮小し、そこから得られる税収増を、一般財源ではなく最低保障年金の財源として用いれば、高齢者間の所得再分配に貢献できる


p176.現行の医療費の使われ方には、効率化の余地が大きい。診療報酬を画一的に抑制するのではなく、医療費の非効率的な使われ方を改善することで、医療の質を引き上げつつ、費用を削減することは十分に可能である。そんおひとつの根拠として、一人当たり医療費に大きな地域差が、安定的に存在していることがある。たとえば、2008年では、最大の高知県と最小の千葉県との間には1.5倍の差がある。これは病床数の地域差とも対応しており、必ずしも治療を必要としない患者を受け入れる「社会的入院」の差を反映したものと見られる。もっとも、仮にある程度のムダがあったとしても、日本の医療費のGDPに対する比率は8.5%(2008年)と、米国の16%、フランスやドイツの約11%などと比べれば相対的に低い。それでも世界トップレベルの平均寿命を維持していることは、日本の医療システムの効率性を示しているという世界保健機関(WHO)の報告書もある。しかし、これは「警察にかける必要が米国より少ないにもかかわらず、日本で犯罪が少ないのは、警察官の優秀さを示す」という論理と同じである。実際には、犯罪率が低いから警官の数も少なくて済むのと同様に、日本人の肥満度が米国人の10分の1にとどまっていることに代表される、国民の健康水準の高さが、長い平均寿命と少ない医療費の共通の要因となっている。それにもかかわらず、主要先進国と比べて医療費が相対的に少ないことから、先進国並みにまで医療費を増やせば、日本の医療問題の多くが解決するような異論がある


p199.天下りのポイントは、本省に残れる幹部と比べた時の、退職勧奨される者の処遇の公平性にある。昇進人事が、誰しも納得するような「実力主義」に基づくものであればともかく、そうでないからこそ、不満を和らげるためのポストが必要となる。過去の高い経済成長の時期と比べて、受け入れ先のポストは減る一方で、人事部の苦労は増え続けるのである。解決策は、整理解雇の際の金銭賠償と同じ論理を適用し、組織に残れる者の待遇を調整して、バランスをとることである。これは必ずしも報酬の引き下げではなく、仕事上の責任の重さや、望ましい成果を得られなかった場合には解職されるなどの雇用リスクを高めればよい。そうなれば、昇進ではなく、平社員として定年退職時までの雇用保証を選択する者も増え、人事部が処遇に悩む必要は減るであろう。これは、企業内の役職人事に「市場原理」を導入することに近い。役職ポストには高い給与と社会的地位がある反面、仕事の責任の重さと、失敗した場合のリスクの大きさとが見合う必要がある


p212.日本の農業を蝕む耕作放棄地の増加は、高齢化にともなう、やむをえない減少ではなく、農地法に定める「耕作者が農地を所有する原則」への明確な違反行為である。自ら耕作することができなければ、他人に売却するか貸与する必要があるにもかかわらず、長年にわたり放置されている。これは、農地にかかる相続税や固定資産税の極端な優遇策により、農地を保有し続けるコストが低いことと、万一、宅地や道路などに転用されれば、その価値が大幅に高まる潜在的な資産需要による面も大きい。こうした農地への「投機的需要」が、耕作放棄地の増加や、農地の集約化が進まない大きな要因となっている


p229.「固定資産税を引き上げると高齢者が払えず、住み慣れた街から追い出される」といわれることが多い。しかし、都心部で6階建てのマンションが建てられる広さの土地で、古い庭付き一戸建ての家に居住する高齢者のケースを考えてみよう。この時、選択肢はふたつある。ひとつは、その土地を高い値段で売り、郊外の広い庭の一戸建て住宅に移ることである。もうひとつは、マンション建設事業者と交渉し、自宅の土地との等価交換で、最上階の日当たりのよい自室と、別に賃貸用の部屋とを入手し、その家賃収入で固定資産税を払えば、住み慣れた地域から動く必要はない。都市空間の高い公共性を考慮すれば、単に昔から住んでいたというだけで、多くの家族が居住できる場所を特定の個人が独占する権利は誰にもない。自らの財産をどこまで有効活用する義務があるかが、固定資産税という「都市の価格」で示されるのである。なお、現行の固定資産税は、土地と建物の両方に課されるが、都市空間の高度利用を促進するためには、土地により重く課し、建物への課税は引き下げることが望ましい


p233.首都高速道路では、混雑すると特定の入り口を閉鎖してしまうが、これでは道路を本当に必要としている人とそうでない人を区別することができず、原始的な手段である。むしろ混雑度に応じて料金を引き上げ、高いコストを払っても利用したい者を優先するほうが、はるかに効率的である。現行でも、夜間は昼間より料金を下げているが、そうした2段階の料金設定では、はなはだ不十分であり、料金を100円単位で小刻みに上下させることで、常に最大数の車両が快適な速度で通行できる。なお、方向によって混雑度が異なる場合には、ETCを使えば、出口で料金を調整することも可能となる。混雑度を反映した料金設定は、利用者に対して、短期的には価格をシグナルとして混雑の程度を明示するとともに、長期的には最も輸送力を増強すべき路線を明らかにする。混雑にともなう料金の増加分が、供給力を高める財源に向けられれば、混雑時の高い料金によって、高速道路を利用できなかった者への間接的な補償にもなる


p236.「農地に宅地並みの課税をすれば、採算がとれず廃業を迫られる」として「土地の担税力を無視した課税は不公平」という「常識」がある。両者の論理の違いは、目に見える原住民の既得権だけを考えるか、その土地・空間を必要としている潜在的な利用者の利益も考慮するかにある。これは新自由主義の考え方では、混雑する道路や鉄道の改善のために、その貴重なスペースの配分を「混雑料金」という価格で調整するのに対して、現行制度は道路や鉄道の利用を先着順に決め、それ以降の利用者のニーズにかかわらず、一律に「満員お断り」とする違いと同じである。新自由主義の考え方は、単なる「自由放任主義」ではない。「賢人」政治や伝統的な共同体に依存するのではなく、不特定多数の人々の利益を最もよく調整できる市場を最大限に活用するための、政府の役割を重視するものである




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