柴田明夫『日本は世界一の「水資源・水技術」大国』講談社+α新書

公開日: : 書評(書籍)



20120312000020


著者は商社の名のついたシンクタンクの所長の肩書き。だから、おそらくは本人の一人の手になるものではないのだろう。内容的にデータを丹念に拾い上げて解説しつつ話を進めていく骨の折れる仕事について、最初から最後まで手抜きのない印象。その肩書きだけに商社ビジネスとのつながりを感じる。そのようなポジショントークの疑惑もありつつ、内容的にはすごく説得されそうだ。水ビジネスって面白い。なにより、水は他の資源で容易に代替できないという貴重さが堪える


昔、縁あってアルーバというカリブ海の小さな島国(といっても宗主国のオランダに外政など一部の国権を任せているのではなかったかな)に何度か行ったことがあった。この島の上水道はすべて海水から淡水化したものだという説明があったのを思い出した。余談だが、ここはマクドナルドのフライドポテトにケチャップだけでなくマヨネーズもかけるという奇妙なところだったな。このアルーバの照りつける太陽と強い熱風と透き通ってはいないがそれなりに美しい渚を思い出しながらこの本を読んだ。ただ、そのようにしているのは、いまやそんな小島だけでなく、環境的に生水と無縁な国や地域にとっては普通のことなのだろう


この本、多くの人が関与しているのではないかと思うのは、データだけでなく、ちょっとペダンチックなトリビアもふんだんに鏤められているところだ。とても一人では収集できないのではないか。そういうの嫌いじゃないので、思わずメモしてしまったのが、印パの紛争の最初のきっかけ、rivalという語の由来、政治の「治」という漢字がさんずいなワケ、など


さて、この本を読んだから何をしようかな。水をテーマとした投資信託? テーマを持った投資信託ってのは、設定時に最も外部環境がよく、その後はあんまりということが多い気がする。現に、この本で紹介されていた世界の水関連企業に投資する投資信託は、すでに十分、上昇しているようにも思える。筆者の言うように、まだまだ継続的にビジネスは発展し続けるということなのかな。かといって、個別株を買うのもリスクだし、それ以外の商品化されていない投資は素人には危ないしな


日本の無駄にされている淡水資源、特に川ってえのは、実は興味あるんだよな。水そのものだけでなく、それこそ本書でも言われているような急峻さなので、その流れで小さな発電をバンバンできるのではないかと。確か長野県は松本あたりでNPOとかがやっていたんじゃなかったっけか。田舎に川の流れる土地買って発電したい。土地には太陽光パネルも敷き詰めたりして




p14.水資源の配分は、石油や金属資源にもまして不平等なのだ。さらに悩ましいのは、水は石油などと違って、ほかに代替するものがないということである


p17.原油価格が高騰するなかで、カナダでは水分が蒸発して固体化したタールサンド(油砂)からの原油生産が拡大している。そこから石油を回収するためには、高温・高圧の水蒸気を吹きつけなければならない。石油だけでなく石炭の生産でも、掘削の際の粉塵防止や選炭のために大量の水が使われる


p30.日本では、家庭用水の料金は、たとえば東京都の場合、1トン当たり200-400円である


p52.インドとパキスタンは過去3度の武力紛争を行っているが、最初の紛争はインドがカシミールに介入し、インダス川の支流の水を絶とうとしたことがきっかけだった


p83.日本で実際に使用されている水量は、2003年の取水量ベースで年間852億立方メートルである。水資源賦存量に対する水資源利用率は約20%にすぎないのだ。水資源利用率がこれほど低い理由の一つは、日本の地形が急峻だということにある。ヨーロッパの人間にいわせると、「日本の川は川ではない、あれは滝だ」そうである。それほど急峻なのだ。加えて河川の延長距離も短く、降雨が梅雨期や台風の季節に集中するため、降雨量のうちかなりの部分が資源として利用されないままに海に流れてしまう。だkがこれは、決して悲しむべきことというばかりではない。日本が水を余らせてきたのは事実だが、それは同時に「利用可能な水資源の潜在的な量」が豊富だということなのだ。現在5分の1しか利用されていない水資源府存量をフルに活用することができれば、日本はたちまち世界トップクラスの「水資源大国」と化すのである


p120.「好敵手」「競争相手」を意味するrival(ライバル)という英語の語源は、ラテン語のrivalis、すなわち「他の人と共同で水を使う人」だという。それだけ、水をめぐっては長い対立の歴史が存在するということだ


p128.かつては国を問わず、「水を治める者が国を治める」(政治の「治」という漢字は河川を治める意)という感覚があり、上下水道事業は公的セクターが担う性格のものだとみなされてきた


p145.三菱UFJ投信・証券マーケティング部の山口裕之チーフマネジャーによれば、新興国の新規需要と合わせ、ライフラインとしてのインフラ投資は安定かつ長期にわたるため、水関連の市場規模は年に3650億ドル、その後も年に10パーセント伸びるといわれており、関連企業の収益機会はさらに広がると予想された


p154.大型海水淡水化プラントの淡水化コストについては、1980年代は1トン当たり数ドル(当時1ドル=240円として数百円)といわれていたものが、1991年には同1ドル近く(約200円)に下がり、現在では1ドルを切っている


p159.地球上における水資源は非常に少ない。全体を風呂桶とすると、我々が使用可能な淡水の量は片手ですくえるほどでしかないのだ。その需要は年々拡大する一方だ。しかも水に代わる物質はほかにない。つまり、水は21世紀において石油をもしのぐ資源だということもできる。将来、原油のように取引所でやりとりされてもおかしくないとすらいえるだろう。いや、すでに水は石油より高いといってもいいかもしれない。ガソリンが1リットル150円を超えたと話題になったことがあるが、スーパーで1リットルのミネラルウォーターを買えば200円以上することはざらではないか。自動販売機で購入すれば、500ミリリットルで120円、150円という値段がつく。水道水なら1リットル当たり10銭ほどで済むのだが、日本人は2000倍のお金を払うことまでして、不思議と思わずにミネラルウォーターを買っているのだ


p170.日本も下水道技術をもって、こうしたBOPビジネスの展開を検討すべきであろう。ただ問題は、当然のことながら、BOP国と日本とでは大きな経済格差があることだ。そのため、BOP国でのビジネスにおいては、「日本人スタッフが1人入っただけで赤字になってしまう」といわれているほどだ


p181.日本は耕作放棄や生産調整を行っている場合ではない。もはや世界を頼りにすることはできない。いまこそ耕作放棄地や生産調整値での飼料用米の生産を始め、農業技術、環境対応、人材など、あらゆる資源を総動員して、国内食料生産の拡大均衡、食糧自給率の向上を目指し、来る食糧危機に備える段階を迎えているといえよう




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