原丈人「21世紀の国富論」平凡社

公開日: : 書評(書籍)



20120817001241








かなり昔の本になってしまったが、新鮮さは失われていない。もっと早く読んでおくべきだった


いまAppleのiPhoneやiPadが売れていることが予言されているような気がする


IRと上場企業のストックオプションの否定について同感。前者は意味がない。後者は有害




p15.アップルコンピュータも2006年に過去最高益を記録しましたが、売り上げの半分以上を占めたのは、創業事業のパソコンではなく、iPodを中心とする音楽事業によるものでした。2007年にはその社名も「アップル」に変更。「コンピュータ」のついた社名が経営の実態にそぐわなくなったためです


p23.マイクロソフトやボーランドの粗利益率は実に85%以上。結局は破綻しましたが、ネットバブル時のドットコム企業の粗利益率は理論上100%といわれました。それに対し、たとえば日本でも機械や鉄鋼など、平均すると10%程度にしかならない産業も多いのです


p45.本来、企業価値を引き上げるというのは、着実に生産活動を行い、その結果として市場から高く評価されるというプロセスによるべきです。ですから、しゃべることが文化の重要な要素を占めているアングロサクソン流経営の真似をして、日本でも多忙な社長がIR活動を世界各地でやるべき、などという議論は本質から外れています


p52.ROE経営は「すでにあるもの」の効率化を図ることはできても、「今はないが、将来つくるもの」の価値を最大化することはできません。反対に、そういうものを積極的に切り捨てたほうが、ROEは上がる。ROE市場主義では、今後の産業転換に適応していくことができないのは明らかです


p59.本来、企業というものは従業員や顧客、仕入れ先などを含めたパブリックなものであり、決して株主だけのものではありません。もちろん、株式を5年、10年といった長期にわたり持ち続け、その企業を支えようという株主なら、ある程度は「企業の持ち主」ということもできるでしょう


p60.リストラによって会社の「見かけ上の再建」を行い、さらにIRを駆使して株価が上がった段階でオプションを行使するのです。CEOは濡れ手にアワの利益を獲得しますが、彼らが何かを生み出したかといえば、ゼロなのです。アメリカにはこうした「CEOゴロ」が多い。これが現在のアメリカで行われているコーポレート・ガバナンスの実態であり、カリスマのごとく崇められるCEOの姿です


p61.公開企業におけるストックオプションを廃止すべきだと考えています


p62.ストックオプションは本来、このような「オーナー以外の人々」に対して、低い金額で株主になってもらうための機会をつくるものです。したがって、日本のベンチャービジネスでしばしば見られるように、オーナー自身がストックオプションを要求するというのも、原理原則に反する話です


p64.上場企業はストックオプション制度を取り入れるべきではありません。これから新しい資本主義の時代を迎え、公開企業におけるストックオプションは廃止の方向に進んでいくはずです。現実に、大企業におけるストックオプションは上層部のごく一部だけにキャピタルゲインをもたらし、所得分配を歪める一方なのです


p93.「ネットワークにつながってなければ、コンピュータではない(The network is the computer.)」といったのは、サン・マイクロシステムズのスコット・マクネリーです。彼がそういった1980年代には、このことはほとんど誰からも理解されていませんでした。マイクロソフトのビル・ゲイツは、1990年代の後半に入ってからでさえ、インターネットの重要性をまったく理解していなかったと思います。インターネットの爆発的な普及は、今から考えれば、計算からコミュニケーションへの大きなパラダイムシフトだったのです。だから、コミュニケーションという土台の上にすべての機能が設計されるようになれば、本当に使いやすいITの世界ができあがるはずです


p94.企業はそんな商品を売りつけたことを詫び、消費者にお金を返すのが普通です。しかし考えてみれば、パソコンだけは途中で止まることを許されている。ひじょうにおかしな工業製品であるといわざるをえません


p130.CEOが責任を負うのは、業績だけではありません。経費についても、社外役員会に直属するコントローラーがランダムサンプリングを行ってこれを厳正にチェックし、些かでも私用と思われる経費を含んでいた場合、CEOにとって致命的なミスとなり、解任も含む責任を負わされることになるのです


p133.マネーゲーム化した市場において、短期的な株価上昇を求める株主の利益と、ストックオプションをもつことでCEOが得る利益が、完全に一致してしまったのです


p134.CEOは1期目に1名、次の期にもう1名といった形で、自分の息のかかった人物をつぎつぎと取締役にしていきます。このような社外役員を、英語ではクローニー(馴れ合い)・ボードと呼んでいます。彼らは一見、会社の内部とは関係がないものの、たとえばCEOの所属するゴルフクラブの仲間であったり、CEO一家の弁護士の親であったり、すべてがCEOのイエスマンです。株主の総意という観点から経営者をウォッチするという本来の役割など、果たせるわけがありません


p161.新しい技術が生まれ、世の中の枠組みが変化すれば、すべてが変化するということを忘れてはいけません。西部開拓の時代からアメリカ各地で発達し、重要な交通機関となった幌馬車のことを知っている人が今、どれだけいるでしょうか。各地で設立されたたくさんの幌馬車会社をつぎつぎと買収し、一握りの大企業がようやく独占的な支配を確立した頃、現れたのが鉄道です。そして巨大化した幌馬車会社は、あっけなく消えてしまったのです。歴史が教えてくれるこういう事実は、今から振り返ればごく当たり前のことでしょう。しかし当時、長距離を移動する乗り物といえば幌馬車しか知らなかった大多数の人々にとっては、いつか幌馬車会社がなくなるなどということは想像すらできなかったのです


p182.ベンチャーキャピタリストという職業柄、私はいくつもの公開企業を生み出し、その創業者や従業員を、数百人という単位でビリオネア(億万長者)にしてきました。けれども私が見るところ、100億円以上のお金をつくったそのような人たちのなかに、本当の意味で幸せになった人はほとんどいない、という事実があります。お金持ちになったら幸せになれる――そう人々を信じ込ませるところに、アメリカンドリーム流の「幸福の定義」は問題があると私は考えています


p183.実際ビリオネアになってみると、お金で買ったモノによって自分は決して満たされないことに気づきます。そして、これは「経験してみてから」では取り返しのつかない事態になっていることが多いのです。シリコンバレーでも、事業で成功して急にお金持ちになった人が、ほしかった欧州車を何台も買い、プールのある大きな家を買います。なかには宮殿のような家を買う人もいます。でも家なんて、ある程度の規模より大きくなると、かえって居心地が悪いものです。おいしいものだって、たまに食べるからおいしい。楽しいことも、たまにできるからうれしくて特別なのです。特別なことが日常になれば、すぐに感動を忘れてしまうのが人間という生き物です。今、私たちはもう一度、何が幸せであり何を人生の目標にすべきか、考え直す時期に来ているのではないでしょうか?


p249.新しい産業を生み出し、国の経済に豊かさをもたらす本質的なものが「新しい技術」に他ならないこと。この本を読んでくださった読者の方々に、そのことを少しでも理解してもらえたとしたら、幸いです。新たな雇用をつくり、人々を豊かにすることができるのは、新しい技術が生む基幹産業だけなのです


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