田中靖浩「40歳からの“名刺をすてられる”生き方」講談社+α新書

公開日: : 書評(書籍)



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いまの企業人?の生き様。大体、思っているけどうまく表現できないことを的確に文章にできていて膝を打ったり笑ってしまったり。特にダチョウ男のところとか言い得て妙


常識と言われながらも、最近の1世代30年の特異な現象だったり、他国と比較して異常なことだったりというところの指摘がよい。例えば、日本はサービスの水準が高すぎる、もっと手を抜くべき、効率化したらそのぶん休むべき。もっと褒めることに意識すべき、とか


麻雀の勝ち負け、「下り」の概念というのもよい喩えだ。麻雀や競輪ぐらい分からないといけないな


やっぱり公認会計士からの目線というのも、この本への魅力を増加させているように思う。コンプライアンスのこととか、アームズレングスのこととか、自営業マインドのこととか


自分もいま典型的な会社従業員をしているが、これほどに長い間よくも続いてきたと思うというのも、自営業の家庭に育って家業を手伝ってきた。筆者の言うような、自営業的なマインドはあるように思う。ただポイントカードは好きなんだけど、これはロジ好きということでdistinctできると思ってる、勝手に


国としても業界としても会社としても行き詰まりを感じているので、なんか方向転換をしようとも思ったりして、尊大にも




p19.日本のほうがむしろ「敏感で過剰すぎる」のではないかと。敏感さは緊張を生み、過剰さは高コストにつながります。そして果てなきサービス競争はいつしか従業員から笑顔を奪います。日本のレンタカー会社はマニュアルレベルのサービスでは世界トップですが、そこで働く従業員の笑顔はぜったいハワイのレンタカー会社のほうが上です


p32.歴史を江戸時代にまでさかのぼると、先述の「三行半」を手にした女性たちは何度も結婚を繰り返していました。それどころかお上が「女性たちよ、できれば2回以上結婚しなさい」と奨励していたようです。これは江戸の町をつくるために全国から男たちが集まり、それによって「男が多くて女が少ない」人口状態だったことによります。すべての男に1回は結婚させてやりたいというお上の親心から、離婚・再婚が奨励されたわけですね。また結婚回数の多い経験豊富な女性は、かなりモテる存在だったようです。もちろん「出戻り」などという縁起の悪い表現はなく、「呼び戻し」と言ったそうな。どうやら私たちが常識と信じているほとんどは「そのとき、たまたまそうだった」ということなのかもしれません


p34.いまでも就活にのぞむ学生さんの大企業志向は根強いものがあります。なぜなら彼らの頭の中には「中小企業より大企業のほうが給料が高いし潰れにくい」という思い込みがあるからです。たしかにこれまではその通りでしたが、いまやかなり怪しいです


p76.自営業仲間の男たちにはいくつかの「共通点」があることを発見しました。まず自営業の多くは「親も自営業」の人間が多いです。子どもの頃から自営業の父親を見て育つと、自分のなかに自営業気質が芽生えるようです。また私たちの父親世代といえば9%時代の「輝いている自営業」でしたし。次に自営業の男たちはポイントカードが嫌いです。私も大嫌いです。主婦みたいだし、めんどくさいし。自営業の男はポイントをちまちま溜めているヒマがあったら、カネを稼ぐ方法を考えたほうがいいと思っています。そして自営業の人間は自らの経済的な危機に対してすごく敏感です。嗅覚ともいえるレベルの危険察知能力をもっています。これも当然なのかもしれません。自分を守れるのは自分しかいないわけですから。ときに人から「神経質すぎる」とか「つまらんことを気にしすぎだ」といわれることがありますが、それくらいでないと自営業というのは務まらないのです


p79.英語のことわざに「ダチョウは危機から頭を隠す」というのがあります。ダチョウは身の危険が迫ったとき、頭だけ砂に隠して「危機は見なかったことにする」ことからそう言われています。心理学にostrich syndrome(ダチョウ・シンドローム)という用語があるくらいで、「ダチョウの現実逃避」は海外では有名なことわざです。日本にも「危険は見なかったことにする」、現実逃避している生き物が生息しています。――それが日本のサラリーマン男たちです


p80.本物のダチョウは世界最大の鳥です。でも、空を飛ぶことができません。飛べないのですが、走る速度はサラブレッド並みの最高時速60キロ。すごい脚力なんです。むちゃくちゃ速く走れるけど、空は飛べないダチョウ。――なんとサラリーマン男たちにソックリなんでしょう! 会社の中では最高に威張っている。でも転職はできない。他の会社には転職できないが、社内をすごいスピードで走りまわる。社内の人間関係を調整するスピードは抜群。そしてダチョウは頑強な体力を誇ります。これは体力にものをいわせて残業を厭わない男たちを彷彿とさせます。そしてダチョウは群れるのが好きです。これも夜な夜な仲間内で飲み、週末はにぎにぎしくゴルフに出かける男たちにソックリではありませんか!


p92.プロ野球界では「年齢の高いものが上」という明確な上下関係があります。年棒でなければ実力でも入団年次でもなく、単純な年齢で上下関係が決まるという明快な基準。中学・高校の先輩・後輩がそのまま続いているイメージです。また落語家さんの世界では「入門日の早い者が上」です。実力も稼ぎも関係無し。とにかく1分1秒でも先に入門した者が「兄さん」。――これまた明快ですね。こうした例にくらべて、もっとも曖昧でわかりにくいのが昨今の会社の上下関係です。人事制度が複雑になり、中途入社が増えた結果、いろいろな人が入り乱れて仕事するようになり、誰が上司で誰が部下なのか、サッパリわからなくなっています


p112.そういえば黒澤明監督『七人の侍』にこんな台詞がありました。これを「コンプライアンス・内部統制は完璧だけど赤字」な会社に贈りたいと思います。「クビが飛ぶっちゅうのに、ヒゲの心配してどうするだ」


p130.お金を稼ぐこと自体が目的になると、「これだけ稼げば充分」という終わりが見えなくなります。また額に汗して働く農業やものづくりが低く見られ、スマートに一攫千金を狙える金融業に人気が集まります


p133.仕事を効率的にこなしたうえで、他人に対する気遣いまでこなすことをそろそろ「手抜き」してもいいのではないでしょうか。電力と同じで「エコモード」


p134.同じ手抜きでも、単に「手を抜く」のではなく、積極的に手を抜く態度として「見」という言葉があります


p135.麻雀でいえば、勝つためには「上がりかた」だけでなく「下りかた」こそ重要なのです。「下りる」というのは「逃げる」こととはちがいます。そのときの相手の状況や全体の空気・流れを読んで、あえて勝負に参加しないで「下りる」――このような態度を「見」といいます。見は消極的な態度ではなく、むしろ積極的な姿勢です。このような見は賭け事だけでなく、仕事でもすごく重要なことです


p142.そろそろ効率アップ後に「②休む」ことをよしとしてもいい頃です。お金持ちならぬ「時間持ち」が偉いという価値観に転換するのはいかがでしょう?


p144.「お客様、なにか失礼でもございましたでしょうか?」そこで私は「失礼じゃない。あのバイトの女性はすばらしい」と、彼女のいいところを具体的に店長に説明してあげます。「ああいう子はちゃんと大事にしたほうがいいよ、じゃあ」と帰ります。それだけ。以上が直訴運動です。この運動のポイントは、ダメな従業員には一切目をつぶって、いい仕事をしている従業員のことを褒めることです。それも本人には伝えず、上司に言う。だから直訴運動


p180.私自身、「孤独死するのは寂しい」という心情にはまったく共感できません。自分の部屋で孤独死して、しばらく経ってから見知らぬ人に発見される死に方のどこが悪いというのでしょうか? 恥ずかしい? べつに垂れ流しているのを見られたって、他人なんだからいいじゃないですか。それに死んでるんだから恥もへったくれもない。それに独身だから孤独で、家族がいれば幸せという短絡的な思考、想像力の欠如をなんとかしてほしい。それどころか「家族がいるのに孤独」のほうがよっぽど闇が深い。私は自分の老後、子どもたちの間で「たらい回し」にされるのが最悪の想像です







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