プロとアマ、または顧客満足と自己満足/森博嗣「常識にとらわれない100の講義 」大和書房③

公開日: : 書評(書籍)



20130223112111








近接して、対照的な2つの記述があった




p092.良い仕事というのは、切れ味の鋭い刃物でさっと仕上げたものであり、これがプロの手際というものだ。傍から見ていると、あっさり出来上がってしまい、簡単そうに見受けられるけれど、それはアマの目で見ているからにすぎない。鋭い刃物を使うと、切り口も綺麗だし、力も必要ないし、なによりも安全だ。しかし、その切れ味は、仕事がないときにも毎日刃を研ぎ、磨き上げたものだけが発揮する。この場合、 「手応え」は、切るまえに既にある。仕事の以前に、自分に対する手応えがある。そういうものではないだろうか。


p093.若い人の話を聞くと、 「手応え」というのは、人から感謝されること、ユーザに喜ばれること、という意味でも使われる。これも変な話だと僕は思う。商売というものを誤解している。 「お客様の笑顔を見たいから」といった作られたキャッチコピィを真に受けてしまった誤解である。たしかに、お客様の満足は大事な要因の1つではある。そんなこと当たり前で、今さら言うまでもないだろう。しかし、作り手がその程度のものに一喜一憂しているレベルでは、やはりアマだと思う。プロというのは、自分自身に確固たる評価基準があり、それに従って淡々と仕事こなすものではないだろうか




自己満足と、顧客満足の見方の違い、が気になる


顧客に喜んでもらった幸せの対価として金銭的な報酬が得られる。飯を食わなければならないという意味では交換価値をまず得ることが必要になってくる


そして、いったん交換価値の保有に満足したならば、仕事の意味合いも、他者を満足させることだけを一義にせず、自分の充足に力点を移すこともあるのだと思う。土地柄の良いところには、不動産所得で生活に困らない人いるものだ。そんな人が、独立系として外車の、それも二輪車のディーラーをやったりしているのを見るけど、ああいうのがそうなんじゃないかと思う


それがアマというつもりはないけれども、付き合う顧客も、顧客としての満足というだけでなく、つまり仕事とか職業的なものでなく、もう少しその経営者の全人格的なところを見て、それが投影された外車ディーラーとしての表現形式を楽しんでいるんじゃないかと思う


これは、基本的な生活のところが回っているのであるし、素晴らしいものとして羨ましいものだ




p095.作家というのは、デビューの頃よりも必ず上手くなっている。能力的に成長している、ということだ。読者の中には、 「あの作家は、もうこういうものが書けなくなった」なんて言う人がいるけれど、スポーツとか美声とか、その種の身体的なものではないので、 「書けなくなる」ことがないのである。自分で作家になって、それがよくわかった。ただ、同じものが書きたくなくなるだけだ




確かに著者のいうような、ひところの勢いのない作家というのがいる感覚はある。これは著者の自己弁護かもしれないと思いながら読んだのだけど


著者もそうらしいけど、成功を収め一廉の作家となれば、基本的な生活は困らない。その上で、自分の作品について、従来のレベルでは飽き足らず、さらなる高みを目指そうとして作品の上市が少なくなったり、それが従来の読者層から支持されなくなったり、する


かといってアマでは決してないと思うけど、さらなる挑戦をしている地点においては、前段で著者の言っているアマなんじゃないかと思う





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