司馬遼太郎「王城の護衛者」講談社文庫②
20130313185500
よく知らなかったんだけど、これ短編集だったんだ。すべてが松平容保のことを書いているのではない。玉松操、大村益次郎、河井継之助、岡田以蔵、がまったく別の物語として取り上げられている。どれも等しく面白い
ただ、大村益次郎は「花神」、河井継之助は「峠」として、すでに司馬の作品に存在する。そのダイジェスト版という趣。すでに読んでいる者としては、新しい気づきはなかった
まだ岡田以蔵は、どうしても大河ドラマ「龍馬伝」の印象が深く、岡田以蔵、武市半平太、坂本龍馬、勝海舟が、あのドラマのキャストで思い起こされる。あのドラマに比べたら、以蔵はイメージ通りだけど、武市半平太はドラマのほうが全然さわやかだったりしたな
今回も松平容保で、孝明天皇の宸翰と御製の和歌のところ
p88. 2人は黒谷本陣に駆けこむと何やら喚きながら玄関へとびあがった。驚いて家老の横山主税、神保修理、田中土佐らが出てきた。 「下座、下座、下座」と、小野と小室は狂ったようにそう叫んでいた。家老たちに平伏の礼をとらせようとしていた。家老たちは最初事態がよくわからなかった。やがてそれがわかったとき、かれらも狂騒し、血相がかわった。 「まさか」と、容保はその文箱をみるまでは信じなかった。信じられることではなかった。古来、い、天子から武家に御真筆の宸翰がさがったというような例はない
この部分は、いまの大河ドラマ「八重の桜」でも、セリフこそ違ったけどシーンはほぼ同一だった。大河ドラマの演出は上手だと思った
p131.維新政府から逆賊として遇されたかれは、維新後それについてなんの抗弁もせず、ただこの2通の宸翰を肌身につけていることでひそやかに自分を慰めつづけて余生を送った。「御怨念がこの竹筒に凝っている」と、明治の中期、第五高等学校教授になった旧臣秋月悌二郎がこのことに異様なものを感じた。秋月はたまたま熊本にきた長州出身の三浦梧楼将軍にそれを語った。三浦はそれを、長州閥の総帥山県有朋に話した。三浦にすれば座興のつもりで話したにすぎなかったが、山県は、「捨てておけぬ」といった。山県にすれば、その宸翰が世に存在するかぎり、維新史における長洲藩の立場が、後世どのように評価されるかわからない。人をやって松平子爵家に行かせ、それを買いとりたい、と交渉させた。額は、5万円であった。が、宸翰は山県の手には入らなかった。松平家では婉曲に拒絶し、その後銀行にあずけた。竹筒一個書類二通という品目で、いまも松平容保の怨念は東京銀行の金庫にねむっている
この部分は、つい先日のNHKの番組でこの二通の宸翰の実物を見せていたのが印象的。
「八重の桜」 山場となる第6回での"会津藩の決意"が藩主・容保と俳優・綾野剛にもたらした意味=後編 – DramaticNavi21~本音で語る映画とドラマの核心
大河ドラマに出てくる容保役と照姫役のキャストが会津若松に行き、容保の曾孫となる現在の当主に会って、2通とも実物を見せてもらうところ。ってことは、司馬の記述は脚色なのか、それとも執筆の当時はそうだったのか。竹筒に入れて肌身離さず、というところは一致していて、その証拠に筒に入るような折り目がついているという
それにつけても、大河ドラマに出演すると、その年は、それに派生してNHKの仕事が多くやってきて露出が増えて羨ましいものだ。またこの容保の曾孫氏はNHK関連会社に勤務しているんだと、ちょっとググると出てくるんだね
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