司馬遼太郎「王城の護衛者」講談社文庫③
20130320010123
最後まで読んだけど、やっぱり松平容保のところがいちばん面白く、次が玉松操だったと思う
村田蔵六が、他の複数の藩や幕府からも複数の役職を与えられる中で、出身の長州からはまったく評価されていなかったというところ、不遇を託つ人にはいい話ではないかと思った。自分の故郷のほうが出自の柵でまったく評価してもらえないと
p211.ついで、幕府の講武所の砲術部門の教授方をも兼ねた。当節、江戸じゅうで村田蔵六ほど多くの肩書をもった男もすくなくなかったろう。私塾をひらくかたわら、幕府の二部門の教官を兼ね、しかも宇和島藩に籍をもち、加賀藩からも扶持を給せられて、翻訳の仕事にたずさわっている。「知らぬのは長州ばかりだったのか」桂は失笑した
こちらは河井継之助のところ。公議が落ち目であると見切りをつけ、より大事な自らの藩経営に携わるべきだ主張。幕府の役職から辞職することを進言し、藩主に容れられている。その辞職の理由が仮病というのも風雅で良いではないか。言われているほうもバレバレのようだが、そんなもんなんだろう
p301.継之助はよろこんで江戸に着任し、こんどは公務として、藩主に辞職をすすめ、毎日御前に進み出てはそれを説いた。継之助の意見は、暗に「今日、無力化した幕府を輔けてもむなしい。大事なのは長岡藩の富国強兵である。それがやがては日本のためになる」ということであった。忠恭はついにこの説を容れ、病いと称して引きこもった。が、幕府ではそれを仮病と察し、長岡藩の支藩である常州笠間の領主牧野貞明をして辰ノ口の老中屋敷に見舞いにゆかせ、忠恭に対して辞職の非を説いた。忠恭はやむなくその説得に従うことにしたが、傍らに継之助がいる。継之助には、議論の相手がたれであろうと見境いがない。大いに反対し、ついに御一門の笠間侯を口をきわめて面罵した。このため退席せしめられ、すぐそのあとで辞表をかき、在職5ヵ月で長岡に帰った
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